(2022年8月発行)

戦略・資本

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SDGs経営

SDGs経営の全体像

中期経営計画では、グループ全体で事業を通じた社会課題解決による経済価値と社会価値の創出に取り組む「SDGs経営」を経営基盤の1つに位置付けています。その実践のために、パーパス実現に向けた重点課題として7つのマテリアリティを特定しました。さらに、各々のマテリアリティにKPIを設定することで、進捗状況の可視化や課題把握を行うなど、実効性の高いPDCAサイクルを構築しています。

このSDGs経営のフレームワークにより価値創造サイクルを駆動させることで、グループ全体のパーパス実現に向けた取組みを推進しています。

図:SOMPOのパーパス→SOMPOのストーリー←SOMPOのマテリアリティ

マテリアリティの特定

パーパス実現に向けたSOMPOのストーリーや国際規範などをもとに洗い出した社会課題に対して、SDGsとの関係性などによる重要性評価を行い、優先的に取り組む社会課題を特定し、これらを整理・統合し、マテリアリティとして体系化しました。

マテリアリティ特定プロセス
PROCESS 1 取り巻く社会課題の洗い出し

パーパス実現に向けたSOMPOのストーリーや国連グローバル・コンパクト、ISO26000といった国際規範などをもとに、経営にとっての重要性とステークホルダーへの影響の双方の視点からSOMPOを取り巻く社会課題を網羅的に洗い出し

PROCESS 2 優先的に取り組む社会課題の特定

洗い出された社会課題をSDGsの169ターゲットとの関係性などによる重要性評価を行い、当社グループが事業を通じて優先的に取り組む社会課題を特定

PROCESS 3 7つのマテリアリティとして体系化 (パーパス実現に向けた重点課題)

優先的に取り組む社会課題に、当社グループが経営戦略上、どのようにアプローチするのかという視点から整理・統合し、パーパス実現に向けた重点課題として7つのマテリアリティに体系化

マテリアリティKPIと価値創造サイクルの統合

マテリアリティ達成に向けた進捗を測るために、マテリアリティKPIを設定しています。その設定にあたって、価値創造サイクルにおける重要なレバーおよびそのKPIと統合することで、SDGs経営による価値創造サイクルの実践を仕組み化しています。

SDGsマトリクス(SOMPOが取り組む社会課題とSDGs)

このマトリクスでは、ISO26000のフレームワークを用いてProcess1で洗い出された当社を取り巻く社会課題とESG・ISO26000の中核主題それぞれとの関係性を整理するとともに、当社グループが商品・サービスの提供などを通じて貢献していくSDGsの169のターゲットを示しています。また、その重要性評価を通じてマテリアリティ候補の絞り込みを行ったProcess2の結果、当社グループが事業を通じて優先的に取り組む社会課題を特定しています。そして、Process3として、これらの社会課題を当社の戦略に応じて整理・統合し体系化したものが、マテリアリティ(パーパス実現に向けた重点課題)です。

SDGsマトリクス表はこちらをご覧ください

マテリアリティKPI

パーパス実現に向けたアクションを明確化し、その取組みの進捗を把握するために、マテリアリティごとにKPIを設定しています。さらに、価値創造サイクルにおける重要なレバーおよびそのKPIと統合することで、価値創造サイクルの実践が可能な仕組みを構築しています。2021年度は、単年度目標のある29項目のうち、24項目で目標を達成しました。マテリアリティKPIはパーパス実現に向けた取組みの進化や戦略の変化に応じて拡充しており、2022年度からは新たに6項目(追加予定の2項目を含む)の追加を行います。このように、グループ全体で価値創造サイクルのPDCAを可能とするフレームワークを構築し実践することで、SOMPOのパーパス実現に向けた歩みを進めています。

マテリアリティKPI表はこちらをご覧ください

SOMPO気候アクションへの取組状況

当社グループは、2021年度からの中期経営計画において、気候変動を重要な社会課題に位置づけ、「SOMPO気候アクション」として、気候変動への「適応」「緩和」そして「社会のトランスフォーメーションへの貢献」を掲げ、取組みを進めています。

SOMPO気候アクション
①気候変動への「適応」

協働を通じた商品・サービスの開発・提供により、社会のレジリエンス力向上を支援

  • AgriSompoによる持続可能な農業への貢献
  • 防災・減災に資する商品開発・新事業
  • 企業向けBCP策定支援サービス など
②気候変動の「緩和」

グループの温室効果ガス排出量ネットゼロ実現(2050年)

  • グループの再生可能エネルギーの導入(2030年70%)
  • 生物多様性などに配慮した持続可能な調達
  • クリーンエネルギー促進に資する商品開発・新事業
  • 企業向け脱炭素促進支援サービス など
③社会のトランスフォーメーションへの貢献

NPOなどのステークホルダーとの協働や金融機関としてのエンゲージメントを通じて社会の移行に貢献

  • 投資先企業へのエンゲージメント
  • ルールメイキングや政策提言への積極的関与
  • 環境人材の輩出 など

1.気候変動に対する4つの取組課題

気候アクションの具体化に向け、気候変動が当社グループにもたらす潜在的なリスク・機会の分析などをふまえ、①グリーントランジションプランの策定・実行、②社内の対応体制の強化、③気候リスクフレームワークの高度化、④気候関連のビジネス機会の創出の4つの課題に取り組む基本方針を決定しました。

2.グリーントランジションプランの策定・実行

当社グループの保険引受・投融資を含めた温室効果ガス(以下「GHG」)の2050年ネットゼロを目指すべく、グループ全体で以下の取組みを進めています。

【取組み①】投融資先のGHG削減中間目標の策定

2021年度に設定した投融資先を加えたバリューチェーン全体のGHG排出量を2050年までにネットゼロとする目標に加え、2022年5月には投融資先のGHG排出量削減に関する中間目標(2025年までに2019年比▲25%削減)を設定し、投資先企業とのエンゲージメントを強化していきます。

【取組み②】保険引受・投融資方針の強化

当社グループは、サステナビリティを長期的価値創造の原動力ととらえ、パーパスの基本的な考え方にもとづき保険引受・投融資および事業活動の意思決定を行っています。

詳細はこちら「ESGに関する保険引受・投融資等に関する方針」

特にグリーン社会への移行に欠かせないエネルギー転換への貢献については、以下の保険引受・投融資への取組みを通じてSOMPO気候アクションを実践しています。

方針をふまえた保険引受・投融資への取組み
  • 石炭火力発電所および炭鉱開発(一般炭)については、新設・既設にかかわらず、新規の保険引受・投融資を停止
  • オイルサンドと北極野生生物国家保護区(Arctic National Wildlife Refuge)でのエネルギー採掘活動への新規の保険引受・投融資を停止
  • 2025年1月までにGHG削減計画の策定がなく、収入の30%以上を石炭に依存するまたは30%以上のエネルギーを石炭で発電している企業や、北極野生生物国家保護区のエネルギー採掘活動に関わる企業の保険引受・投融資を停止
【取組み③】ネットゼロ団体への加盟

当社グループは、2050年までにGHG排出量のネットゼロを目指す金融機関のグローバル連合であるGlasgow Financial Alliance for Net Zero(GFANZ)傘下の3団体に国内保険会社で初めて加盟しました。これにより、保険引受での脱炭素化促進や資産運用でのGHG排出量の削減を通じたネットゼロの取組みの加速と社会のトランスフォーメーションに向けたルールメイキングに貢献していきます。

加盟した3団体(2022年)
  • NZIA(ネットゼロ・インシュランス・アライアンス)
  • NZAOA(ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス)
  • NZAM(ネットゼロ・アセットマネージャーズ・イニシアティブ)

3.TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言をふまえた情報開示

当社グループは、TCFDに賛同し、気候変動に対するさまざまな取組みと透明性の高い情報開示に取り組んでいます。

詳細はこちら

【気候変動ガバナンス体制】

当社グループは、パーパス実現に向けた重点課題(マテリアリティ)の1つである「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」にもとづき、執行役が気候変動戦略・対策を策定・実行し、その遂行状況を取締役会が監督する体制を構築しています。

グループCSuOはグループサステナブル経営推進協議会の議長として、戦略・取組方針の周知や各社の取組みの確認などを行い、そこでの協議をもとに気候変動戦略や対策の遂行状況をGlobal ExCoや経営執行協議会(MAC)に報告します。

詳細はこちら サステナビリティガバナンス(PDF/620KB)

グループCROは「SOMPOグループERM基本方針」にもとづいてリスクコントロールシステムを構築し、Global ExCoの下部組織であるグループERM委員会などを通じて、各事業の抱えるリスクを網羅的に把握・評価し、気候変動を含むグループの「重大リスク」の管理状況を定期的に経営執行協議会(MAC)や取締役会に報告します。

取締役会は、Global ExCoや経営執行協議会(MAC)における議論・協議内容の報告を受け、SOMPOのパーパス実現に照らした戦略の妥当性や対策の各役員のミッションの遂行状況を監督する役割を担っています。

各会議体における気候変動対策の議論状況(2021年度)

Global ExCo:2回
経営執行協議会(MAC):5回
グループサステナブル経営推進協議会:3回
グループERM委員会:2回

【戦略・シナリオ分析】
(1)気候関連のリスクと機会の評価・分析

気候変動に関わる環境変化を洗い出したうえで、当社グループの事業に与えるリスクと機会を短期、中期(5~10年後)、長期(10~30年後)の時間軸で評価・分析を行い、戦略の立案や具体的な対策の検討などに活用しています。

(2)気候変動関連ビジネスへの取組み

これらの分析や基本方針をふまえ、保険を通じた再生可能エネルギーの普及(緩和)やステークホルダーとの共創による防災・減災(適応)、およびESG債などへの継続的な投資などの取組みを進めています。

取組みの具体例についてはこちら

(3)シナリオ分析

リスクと機会の評価・分析をふまえ、物理的リスクおよび移行リスクのそれぞれのシナリオ分析にも取り組んでいます。

①物理的リスク

台風や洪水、高潮などの自然災害の甚大化や発生頻度の増加により、想定以上の保険金支払いによる財務的影響を受ける可能性があります。損害保険事業では、発生傾向をふまえた保険引受条件や再保険方針の見直しによってリスクを抑制可能であり、地理的分散や短期・中期の気候予測にもとづく定量化や長期的なシナリオ分析などの結果にもとづき、レジリエンスの確保を図っています。

リスクの定量把握に向けては、「アンサンブル気候予測データベース:d4PDF(database for Policy Decision making for Future climate change)」などの気象・気候ビッグデータを用いた平均気温が2℃または4℃上昇した気候下での台風や洪水、高潮の変化や極端災害の発生傾向の分析から、長期・中期(5~10年)の影響把握を行っています。また、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)のTCFD保険ワーキンググループのガイダンスにもとづく簡易な定量分析ツールによる影響度試算を行っています。

試算結果

台風の発生頻度 約▲30%~+30%

1台風あたりの損害額 約+10%~+50%

現在は、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するNGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)が検討しているシナリオ分析の枠組みを活用し、分析を進めています。

②移行リスク

移行リスクによる当社グループの保有資産(国内外株式・社債)への影響については、1.5度、2度、3度未満に抑えるシナリオを前提に、低炭素な世界経済への移行が企業に及ぼす政策リスクと気候変動の緩和や適応に向けた取組みによる技術機会が及ぼす影響を、MSCI社が提供する手法を用いて定量的に分析しています。分析により、国内株式への影響がもっとも大きいものの、政策リスクの影響が技術機会によって相殺され、全体的な影響は限定的という結果を得ています。

【リスク管理】

当社は、経営理念・SOMPOのパーパスおよびグループの経営計画において目指す姿の実現に向けて、その達成確度を高めるために「取るリスク」、「回避するリスク」を明確にし、リスクアペタイトフレームワークを構築しています。

気候変動リスクに関しては、当社グループの事業のさまざまな面に影響を及ぼし、その影響が長期かつ不確実性を伴うことをふまえ、「気候変動リスクフレームワーク」を構築しています。

また、政策的移行パターンを想定したリスク評価により気候変動リスクマップとして可視化し、既存のリスクコントロールシステムの枠組みに反映させ、リスク管理の高度化を図っています。

【指標と目標】
(1)主な指標
温室効果ガス(GHG)排出量
スコープ1~3*1(カテゴリー15・投融資を除く)
グラフ:2017年度308,257、2021年度228,051(単位:tCO2e)
スコープ3(カテゴリー15)*2
GHG総排出量
図:2019年度/債券1,059,379、株式1,013,157、合計2,072,379。2020年度/債券906,207、株式948,530、合計1,854,737。(単位:tCO2e)
WACI(加重平均炭素強度)
(単位:tCO2e/百万米ドル)
年度 株式 債券
2019 119.60 121.07
2020 100.58 133.77

その他指標についてはこちら

(2)主な目標
温室効果ガス(GHG)排出削減目標
- スコープ1,2,3
(除く投融資)
スコープ3
(カテゴリー15・投融資)
2025年 - 25%削減(2019年比)
2030年 60%削減(2017年比) -
2050年 実質ゼロ 実質ゼロ

【第三者機関による保証】

SOMPOホールディングスでは、報告数値の信頼性を確保するため、2021年度の温室効果ガス排出量(スコープ1~3)について、ロイド レジスター クオリティアシュアランス リミテッド(LRQA)による第三者検証を受けています。

*1 スコープ1(ガソリンなどの使用による直接排出)、スコープ2(電力などのエネルギー起源の間接排出)、スコープ3(輸送や出張など、バリューチェーン全体における間接排出)の合計値です。算出対象範囲は、当社および主要な連結子会社です。なお、2017-2020年度の排出量は、2021年度の算出基準で再計算しています。

*2 MSCI ESG Research社が提供するデータを使用して国内外の上場株式と社債の投資先におけるスコープ1およびスコープ2を対象に算出。GHG排出量は投資先のEVIC(Enterprise Value Including Cash:現金を含む企業価値)ベースに対する当社持分であり、WACIは、各投資先企業の米ドルでの売上高あたりのGHG排出量をポートフォリオの保有割合に応じ、加重平均した値。