(2022年8月発行)

SOMPOのパーパス

2

価値創造サイクル 新たな価値創造ルート

未来社会を変えるソリューションの提供

既存ビジネスで培った信頼やそこで蓄積した良質かつ豊富なリアルデータにより、多様な事業や人材を共創パートナーとして呼び込み、DXの推進や新たなビジネスモデルであるリアルデータプラットフォーム(RDP)を確立することで、既存事業の枠を超えた新たな価値創造に取り組んでいます。本コンテンツでは、新たな価値創造の一環として、未来社会を変えるソリューション提供に取り組む姿を各社の具体的な取組みとともにご紹介します。

図:MYパーパス→リアルデータの充実→パートナーとの共創→豊かさ・楽しさを支えるサービス提供、社会課題を解決するソリューション提供→SOMPOらしさを理解する顧客との接点拡大→社会インパクト拡大
図:デジタル事業:RDP事業化2事業以上(2023年度計画)、介護・シニア事業:介護RDPの外販・収益化(2022年度内)
写真:アルバート・チュー

2016年より取り組んでいる各事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の徹底的な推進により、既存事業の収益拡大や業務効率の改善を実行するとともに、SOMPOグループ各社の取組みを国内外の各事業・各社に連携することによりグループ全体のDXをさらに加速させ、企業価値の向上を目指します。

また、DXの取組みをRDPにつなげ、特に社会ニーズの高い介護・ヘルスケア領域において革新的なSaaSソリューションを開発・提供し、当社独自のRDPビジネスの具現化を目指しています。

グループCDO
アルバート・チュー

デジタルトランスフォーメーションを実現するDX戦略

当社グループでは、デジタル・データドリブンでの「新事業による顧客価値の創造」と「グループ既存事業のDX推進」を両輪で展開しています。

DX推進を取組みの基盤と位置づけ、デジタル技術の発掘組織の組成、DX推進責任者であるCDOの設置、デジタルトランスフォーメーション実現の担い手の確保・育成(DX専門人材確保・DX人材育成)を3つの柱とし、それぞれを有機的に機能させることで、DXの取組みを加速し、トランスフォーメーション(変革)の実現に取り組んでいます。また、グループ全体のDXの取組みを通じ蓄積されるデータを活用し、安全・安心・健康に資する新たなソリューションを生み出す仕組み「リアルデータプラットフォーム(RDP)」の実現に向けた取組みに連動させ、顧客価値創造を通じた企業価値の向上を追求していきます。

既存事業の変革と新規事業を創出するSOMPOデジタルラボ

2016年4月のデジタル戦略部(現 デジタル・データ戦略部)設置以降、東京・シリコンバレー・テルアビブのSOMPO Digital Lab3拠点体制でSOMPOグループのデジタル事業を支援しています。

各拠点が現地のコミュニティに入り込み、ベンチャー・キャピタルのネットワークも活用しながら最先端の情報を収集することで、最新のテクノロジーに関する情報収集や現地有力企業へのアプローチを可能にしています。また、グループ全体のDXの実現に向けて各拠点が相互に連携することで、多様なビジネスニーズに対する最適なソリューションを提供し、各グループ会社の既存事業の変革と新規事業創出を支援しています。

図:SOMPO Digital Lab - Tokyo, SOMPO Digital Lab - Tel Aviv, SOMPO Digital Lab - Silicon Valley

DX推進責任者の設置

グループ全体のDX推進責任者のグループCDOと、当社グループのコア事業のDXを推進するために各事業に設置された4名のCDOとがアライアンスを構築しDXの取組みを推進するとともに、デジタル先進技術をいち早くキャッチする「アンテナ」としての役割をもつSOMPO Digital Lab 3拠点が市場リサーチとPoC(Proof of Concept)、ソリューション提供の機能を担い、各事業を包括的にサポートすることで、グループ全体のDXの取組みを加速する体制としています。

図:Digital Lab 3拠点(市場リサーチ・ソリューション提供)→国内損害保険事業CDO、海外保険事業CDO、介護・シニア事業CDO、国内生命保険事業CDO、グループCDO

DXで目指す姿と期待する効果

事業 DXで目指す姿 2023年度 期待効果

国内損害保険

  • デジタルによる組織・業務プロセスの変革(守りのDX)
  • CX・UX向上を実現する新たなデジタル・ビジネスモデルの創造(攻めのDX)
151億円
(アンダーライティング収支改善、オペレーション効率化)

海外保険

  • ビジネスプロセスの変革と自動化・新技術活用を通じた差別化の実現
  • データ統合を通じた意思決定の質とスピードの向上
  • デジタル活用によるロスプリベンションの実現
19億円
(オペレーション効率化、新たなビジネス機会、アンダーライティング収支改善)

国内生命保険

  • Insurhealth®(保険+健康)の価値向上によるひまわりファンの拡大
  • 業務の効率化と最適化の追求
40億円
(新たなビジネス機会、オペレーション効率化)

介護・シニア

  • デジタル・データを活用した、高い品質と生産性を誇る未来の介護創造プロジェクトの具現化(介護付きホームや在宅介護モデルの進化など)
9億円
(オペレーション効率化)

新たな価値創造に向けたSOMPOのパートナー

当社グループは、志を同じくするパートナーとともに社会課題解決に資するソリューションの提供による新たな価値創造への取組みを進め、SOMPOのパーパスの実現と企業価値向上を目指しています。

Palantir Technologies Inc(パランティア)

当社はPalantir Technologies Inc(以下、パランティア)と合弁で設立したPalantir Technologies Japan株式会社の3社で、大量かつ良質なリアルデータの活用による新たなソリューションを提供するために業務提携を行っています。 パランティアの技術と当社グループのリアルデータの組み合わせによりリアルデータプラットフォーム(RDP)を開発し、新たな価値創造に挑戦していきます。先行する介護RDPでは、介護施設向けのソリューションを2022年度内に展開予定であり、着々と準備を進めています。

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)

図:社会課題解決に資する相互協力に関する協定 SOMPO/産総研 共同研究等によるエビデンスに裏付けられたソリューションの創出~持続可能な社会の実現~

当社は、国内最大級の研究機関である国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)とそれぞれが持つ強みを総合的に活用し、少子高齢化やニューノーマルへの対応といった社会課題解決に向けた包括的な相互協力に関する協定を締結しています。当社と産総研は、政府・自治体、企業などを巻き込んだエコシステムを形成し、新たな顧客価値やソリューションを創出するプラットフォーム構築を目指しています。まずは介護品質の評価方法の開発と標準化、介護プロセスの効率的な実態把握方法の開発などを進め、日本発の安心・安全・健康のソリューションとして世界に発信することを目指しています。

アンダーライティング業務の高度化と自動化

損害保険ジャパン

パランティアのデータ分析プラットフォーム「Foundry」を、アンダーライティング業務(保険引受、以下「UW」)に導入しました。

社内外に散在していたデータをFoundryで統合し一箇所に蓄積することで、end-to-endのソリューションを構築し、効率化と判断精度の向上に取り組んでいます。

現在、企業さま向け火災保険の引受部門を中心に、UWの主要システムとして使用を開始しています。データを根拠としたプライシングや引受条件の適正化を進めているほか、従来は把握しきれなかった中小規模の高損害率契約を特定し、それらの引受条件の見直しが可能となったことで、21年度は着実な収支改善効果が生まれています。

今後は新種保険への取組み拡大を進め、将来的にはリスクモデルやAI技術を統合することで、UWのさらなる高度化と自動化を目指しています。

また、日立製作所との共創により最先端の疑似量子コンピューティングを用いた自然災害ポートフォリオ最適化技術を保険業界で初めて実用化し、2022年度から自然災害リスクの引受判断に導入しました。自然災害リスクの引受条件、再保険条件など、現実的に取り得る膨大な組合せの中からリスクテイクと安定収益を両立するポートフォリオを疑似量子コンピュータにより高速計算する技術で、すでに企業さま向け地震保険にて利用を開始し、今後もその他種目の保険の引受業務や再保険手配への活用を拡大していきます。

損保ジャパンは引き続き、リアルデータプラットフォームや量子技術をはじめとする最先端の技術活用によるDXを推進していきます。

デジタルとデータを活用した、新たな価値の提供

SOMPOひまわり生命

画像:リンククロス健康トライ

当社では、パーパスの実現に向け、デジタルとデータを活用し、お客さまを健康にする価値を提供していきます。これまで、グループが開設しているSOMPO Digital Labのネットワークを活用したイスラエルのスタートアップ企業であるビナー社との協業、台湾のH2社や新潟大学との協業を通じ、新たな価値を提供してきました。ビナー社とは、ヘルスケア分野で協業し、撮影のみでストレス状態をチェックできる機能を共同開発しました。本機能は、生活習慣の改善をサポートするアプリ「リンククロス健康トライ」を通じて提供しています。本アプリでは他にも、シリコンバレーのスタートアップ企業の健康診断のデータを画像から取得する技術を活用した機能も搭載しています。また、H2社は、世界で約90万人が利用する糖尿病患者向けの健康管理アプリ「シンクヘルス」を展開しています。当社は、業務提携によりアプリを活用したHbA1c値(ヘモグロビンA1c値)などの継続管理を推奨することで、糖尿病患者の重症化予防を応援しています。その他、新潟大学との共同研究として、アプリを用いた自発的な生活習慣の見直しによる、生活習慣の改善効果についての研究も実施しています。

今後も、国内外のネットワークや知見を活かし、新たな価値を提供していきます。

介護RDP—介護・シニア領域でプラットフォーマーへ変革

介護RDPの概要

介護・シニア事業では日本の社会課題である高齢化に伴う介護需要の拡大と介護供給とのギャップを解決し、介護保険制度の持続可能性を向上させることにチャレンジしています。その取組みの大きな柱が「介護RDP(リアルデータプラットフォーム)」です。業界大手のSOMPOケアが持つご利用者さまのビッグデータ(リアルデータ)、サービスやノウハウなどのオペレーション力、パランティアのデータ統合技術を軸に、品質を伴った生産性の向上に資する新たなソリューションを創出し、介護・近接業界へ展開することで業界全体の持続可能性向上への貢献を目指しています。

図:SOMPO(介護が持つリアルデータ)←(ソリューション提供(リアルデータ活用)、利用料など)→ 顧客

介護RDPで目指す姿

介護RDPは介護・近接業界への展開に留まらず、国・自治体との連携による持続可能な介護保険制度の実現、海外への展開などのビジネス拡大を目標としています。

第一歩として介護施設向けに2022年6月よりパートナー会社と連携開始、年度内には本格販売開始を計画しています。並行して自治体との連携による在宅介護モデルの構築・ケアラー支援サービスの検討や、産総研との共同研究によりテクノロジーや介護品質などの標準化にも取り組むことでデファクトスタンダードとなり得る仕組みの構築を目指します。

図:介護施設から国内外のビジネスへ展開

介護RDPのビジネスモデルと実践

介護RDPのビジネスモデル

介護施設向けのビジネスモデルとして、介護RDP、デジタル化支援、リアルサービス提供の3つのメニューで支援することを検討しています。

すでにデジタル化が進んでいる介護事業者には、開発したソリューション(アプリ)を提供し、データ活用による生産性・品質向上を支援していきます。また、各種記録やシステムなどのデジタル化が整備されていない介護事業者に対しては、デジタル化の支援による基盤整備、各種データの一元管理による見える化とともに、リアルデータを取得・活用できるような仕組み作りを支援していきます。さらにデータ面での支援以外にSOMPOケアのノウハウやサービスなどのリアルサービス面でも支援を実施することで、オペレーションの定着や高度化を図っていきます。

これらの支援を実施することで、SOMPOが目指す品質を伴った生産性向上を業界に広めていき、介護保険制度の持続可能性向上に貢献していくことにチャレンジしていきます。

図:SOMPOが提供するサービス。デジタル化されていない介護施設事業者(約7割)→デジタル化支援、デジタル化されている介護施設事業者(約3割)→介護RDP、介護事業者・介護従事者共通→リアルサービス

介護施設向けソリューションの具体例

体調管理・ワークフロー

各種センサーやご利用者さまの日々の記録などの情報を一元化・分析することで体調変化に対する示唆を与えるアプリです。医師とも連携することで薬の調整や必要な介入などができる効果を期待し、開発・実証を進めています。

ケアマネジメントサイクル・ワークフロー

得られたリアルデータや記録をもとに、ケアマネジメントの流れである、「アセスメント」「ケアプラン作成」「介護スタッフ業務(予定)」「介護記録」の4つの観点で示唆を与えるアプリです。要介護度・ケアプランの見直しが実施できる効果を期待し、開発・実証を進めています。

図:散在するデータの統合・見える化→体調管理・ワークフロー(例:薬の調整を医師と連携)→ケアマネジメント・ワークフロー(例:要介護度・ケアプラン見直し)→自立支援

介護RDPで目指す未来

介護RDP推進に向けて

SOMPOケア 取締役執行役員CDO 岩本 隆博

写真:岩本 隆博

日本が抱える社会課題の1つに少子高齢の進展があり、どの産業も避けては通れない大きな問題です。高齢化が介護産業に与えるインパクトとしては高齢者数が増加する一方、生産年齢人口が減少することが指摘されており、2040年には高齢者を支える介護従事者数が69万人不足するという推計を厚生労働省が公表しています。この問題に我々SOMPOも強い危機感を抱いており、介護産業の持続可能性を高めるために何かできることはないかと考えた結果、自社の成長だけでなく、介護RDPを通じ、他の介護事業者や医療などの近接業界と手を取り合い、社会全体の成長を果たすことが不可欠だと結論づけました。

この介護RDPの取組みにより介護産業全体の品質を伴う生産性の向上を目指していきます。適正なケアマネジメントによる介護報酬の算定と要員体制の確保、体調管理や将来予測などによるご利用者さまのADL(Activities of Daily Living)・QOL(Quality of Life)の向上、ひいては社会保障費の削減につなげていくことで、まさに、ご利用者さま、職員、未来社会が「三方良し」となる世界を作り上げたいと考えています。