(2022年8月発行)

戦略・資本

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資本政策(ERM)

資本政策に関する基本方針

当社の資本政策は、戦略的リスク経営(ERM)の枠組みにもとづき、資本・リスク・リターンのバランスを適切にコントロールすることで、強固な財務健全性を維持しながら、グローバル水準の利益規模への成長と修正連結ROE10%以上を見込める着実な資本効率の向上、利益および資本の水準に見合った魅力ある株主還元(株主配当+自己株式の取得)の実現を基本方針としています。

ERMフレームワークにもとづく資本政策
図:資本・リターン・リスク / 資本効率の向上、株主還元の拡充、財務健全性の維持

資本効率の向上

グループの資本効率を持続的に高めるため、既存事業から安定的に創出されるキャッシュフローや、リスクを削減することにより創出される資本を、M&Aを含む成長投資やデジタル技術などの資本効率の高い分野に投資しています。これらの資本効率向上への取組みにより、これまで中期的な目標としていた修正連結利益3,000億円規模への利益拡大と修正連結ROE10%以上の資本効率を、現中期経営計画の最終年度となる2023年度に達成することを目指しています。事業別のROE目標も設定しており、各事業の取組みをモニタリングすることで、グループ全体の資本効率向上と修正利益の拡大へつなげています。

なお、修正連結ROEの目標値は、CAPM*1によって推計した当社の資本コスト7%およびグローバルピアの平均的な水準をふまえて設定しました。

*1 資本資産価格モデル。リスクフリーレート+ベータ(当社株価の株式市場に対する感応度)×市場リスクプレミアムで期待リターンを算出する手法

資本効率を着実に高めるためのグループリスクプロファイルの改善取組みは、グループの中期的なリスクテイク方針を定めたリスクアペタイトステートメント(RAS:Risk Appetite Statement)にもとづいて行っています。RASは、各リスクカテゴリーについてリスク対比リターンをふまえたリスクテイクの方向性を示したもので、RASにもとづき、資本効率の低い政策株式の削減やALM強化による国内金利リスクの削減を定めています。現中期経営計画期間においては、1,500億円程度の政策株式売却、国内生命保険事業で年間3,000億円の超長期債券購入をKPIとして定めています。2021年度は政策株式を501億円売却、超長期債券を3,294億円購入し、着実に取組みを進めました。

成長投資は、現中期経営計画期間中に、3つの基本戦略のうち「規模と分散」および「新たな顧客価値の創造」において6,000億円規模の経営資源を配賦する方針としています。

「規模と分散」では、経営数値目標の達成確度を高めることを目的に、主に海外保険事業におけるM&Aおよびオーガニック成長へ、「新たな顧客価値の創造」では、社会課題解決への貢献、中長期的な成長性向上を目的に、リアルデータプラットフォーム(RDP)の構築やデジタルなど先進技術を持つ企業への出資、ヘルスケア領域への資本投下を想定しています。

M&Aの検討にあたっては、当社事業戦略との整合性やシナジーに関する分析に加え、財務レバレッジを考慮したWACC(Weighted Average Cost of Capital, 加重平均資本コスト)、買収候補企業の業種特性をふまえたハードルレートを設定しており、規律ある投資態勢を確立しています。

図:リスクの方向性、低資本効率分野のリスク削減、既存事業の資本効率向上、高資本効率分野への成長投資→修正連結ROE10%以上の達成

*2 30年債換算

財務健全性の維持

強固な財務健全性を維持するため、経済価値ベースの「資本」と「リスク」を対比したESR(Economic Solvency Ratio)にもとづく自己資本管理を行っています。

自己資本管理にあたっては、財務健全性および資本効率の観点から、適正な資本水準の目安として、ターゲット資本水準(ESR:200~270%)やリスク許容度を設定し、ESRの水準に応じて適切な資本政策を実行します。また、ESRの算定において、昨今の規制動向や国内外保険会社の開示状況などをふまえ、グローバルでの比較可能性を高めるため、国際的な資本規制に準拠した資本管理手法を採用し、財務健全性の維持に努めています。

なお、2022年3月末基準のESRは246%と、ターゲット資本水準の範囲内に収まっており、十分な財務健全性を有しています。

ESRの状況
図:2022年3月末、実質自己資本3.5兆円、リスク量1.4兆円
図:ESRターゲットレンジ。200%~270% 資本効率向上への継続的な取組み、株主還元方針に沿った還元の実施

株主還元

株主還元については、財務健全性や事業環境などを勘案しつつ、持続的な利益成長による増配の継続を基本とし、株価・資本の状況に応じた機動的な自己株式取得も選択肢としながら、魅力ある株主還元の実現を目指します。

現中期経営計画の株主還元方針では、修正連結利益の50%を基礎的な還元とし、業績動向や金融市場環境、資本の状況などをふまえて追加還元を実施します。利益成長により着実に還元総額(配当総額+自己株式取得額)を拡大させていくとともに、利益成長に合わせた増配を行い、株主還元に占める配当の割合を高めていきます。本方針をふまえ、2022年度配当は、2021年度配当から50円増配となる1株当たり260円(中間130円、期末130円)と、9期連続の増配を見込みます。

株主還元方針
図:株主還元(配当、自己株式取得)=基礎還元+追加還元

※追加還元は、以下の場合にリスクと資本の状況や今後の見通しをふまえて実施。追加還元を実施するケースは以下のとおり

  • ESRターゲットレンジ上限を恒常的に超過する場合
  • 自然災害などの一過性要因による減益時に前年度還元額の維持
  • 大型M&Aなどの成長投資が見通せない場合
  • その他資本効率改善などが必要と判断した場合
株主還元総額の推移
グラフ:(億円)2013年度/配当247、自己株式取得額100、1株あたり配当金60円。2022年度/配当865、1株あたり配当金260円予定。