グループCOOメッセージ
次世代に安心・安全・健康な社会をつなぐため
—SOMPOを牽引する社長のミッション—
グループCOO 取締役
代表執行役社長
奥村 幹夫
このたびグループCOO代表執行役社長に就任した奥村です。はじめに、私自身が大切にしていることと、社長としてのミッションについてお話しします。
私の人生を振り返ってみると、これまで多くの出会いや想像もしなかった経験があり、そしてそれらすべてに意味があり、「運と縁」によって支えられてきたと感じています。そうしたなかで私が一番大切にしているのは人との出会いや「つながり」です。長く付き合っていただけるように自分を高め、相手の目線に立ち、自分は何を提供できるのか、ということを常に考えています。
私は、この「つながり」というものは、交友関係などの自分自身のネットワークだけではなく、今この時代を生きている私たちから、次の世代を生きる人たちへの時間を超えた「つながり」でもあると考えています。例えて言うならば駅伝のようなものです。自分が受け持つ区間では、人生をかける想いで一生懸命前に進み、次の世代の人にできるだけ良い形でバトンを渡していきたいと思うのです。私自身、人生をこれまでもエンジョイできていますが、こうした良い思いを実感できる社会を次世代、そしてその次の世代にも引き継げるようにしていきたいと思っています。
次世代に引き継ぐために、私たちが対峙しなければならない主な課題は人口動態と気候変動だと考えます。そして、これらはまさにSOMPOが向き合うべき社会課題そのものです。私たちは、こうした短期間では解決することが難しい課題を背負っていますが、困難だからこそ自分たちが生きている間にできる限りのことをして次世代にバトンをつなぐことが重要です。したがって、SOMPOの役割は、安心・安全・健康な社会を持続可能な状態で次世代に引き継ぐことだと考えています。
そのためにSOMPOは、多様で変化するお客さまのニーズや社会課題をとらえ、その解決に向けたソリューションを提供していかなければなりません。そのキーワードは「つなぐ・つながる・つなげる」です。社会や人の「つながり」はもちろんのこと、SOMPOの事業間で「つながり」、ビジネスパートナーや地域社会と「つながり」、そしてデータを「つないで」ソリューションを開発し、お客さまの人生に伴走する、さらにそこで得られたデータを活用し、より深くニーズに応えられるソリューションに「つなげる」、こういったことを成し遂げたいと考えています。
その実現のためには、私たち自身が常に変化し、多様化するお客さまのニーズや社会課題に対するソリューションを提供できる企業グループに進化する必要があり、その鍵がダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と新たなことにチャレンジする企業文化だと考えています。
私は、会社が存続するためにはD&Iは欠かすことができないという危機感を持っています。それは、会社を経営していくためには多種多様な経験・価値観がないと判断を誤るからです。皆が同質的であると、世の中で何が起きているのか、お客さまは当社や当社のビジネスについてどう思っているのかを把握できず、お客さまの多様なニーズをつかむことはできません。その観点では、ライバルは同業他社ではなく進化するお客さまです。異業種やスタートアップ企業の保険参入により、スマホで数回クリックするだけで簡単に保険加入ができるなど、顧客体験価値が飛躍的に向上しています。お客さまの期待値はまさにそういったものへと進化しているため、私たち自身が従来型の保険会社・金融機関のスタンスのまま、従来からの改善で満足しているようではお客さまの期待に応えることはできません。綺麗ごとではなく、経営する上でD&Iは大変重要で、「なぜD&Iが重要なのか」、もっと端的にいえば「なぜスーツを着た男性だけではダメなのか」ということを役職員全員が自問自答し、形式だけでなく本気でD&Iに取り組む必要があります。
次に企業文化についてですが、私は転職をした経験もあり、自分自身や自社を外から客観的に見ることが重要だと考えています。実際、一度外に出たことによってSOMPOグループのカルチャーを非常にクリアにとらえることができました。SOMPOでは一人ひとりが真面目に仕事に取り組み、安定や信用といった特色の企業文化や強固な経営基盤、130年以上の歴史を通じたお客さまとのつながりを構築してきました。しかし、これまで皆が一生懸命頑張ってきたにもかかわらず、結果として日本社会が過去30年間成長できなかったように、SOMPOも今までどおりの努力の継続だけでは、むしろ退化・衰退してしまうのでは、という危機感を持っています。だからこそ、新しいことへチャレンジしていく必要があります。そのうえでは、前例踏襲や予定調和による意思決定などが足かせになる可能性があります。また、人口減少という未知の局面を迎え、これまでの常識や過去の成功体験は通用しない時代が到来します。日本全体がそうなのかもしれませんが、自らの成功体験から脱却し、新しいことに臆せずチャレンジする企業文化へと変革することが当社グループの課題であり、本気で変えていかなければなりません。できなかったことを真摯に自問自答し、失敗を恐れず新しいことにチャレンジする、成功した人を称賛し合う、互いに学び合い、フラットに意見を言える、そのような企業文化に向けて、執行の責任者として先頭に立ち、自らも努力をしていきたいと考えています。
このように、お客さまの人生に寄り添う伴走者としてソリューションを提供すること、そしてそれを可能とするためにD&Iに本気で取り組み、社員がいきいきとチャレンジしながら働ける風通しの良い企業文化を作ることが社長としてのミッションだと思っています。
社長に就任して100日が経過したところですが、思っていたとおり、実際にどの事業を見ても、一生懸命、誠実、真摯にお客さまに向き合っている企業グループだと感じています。例えば、今年の3月に福島県沖地震が発生した際には、その直後から、私たち経営陣が指示をする前に、お客さまや代理店の皆さま、そして社員の安否確認などの報告が続々と入ってきました。これは組織の隅々に至るまで、災害などが起きた際の行動の速さがDNAとして浸透しているからだと思います。また、災害で被害を受けた方が一日でも早く復旧していただけるよう迅速に行動する社員一人ひとりの姿を見て、改めて現場力の強さを実感しました。
こうした強い現場と社員一人ひとりの努力の結果、中期経営計画は順調に進捗し、2021年度は2期連続の史上最高益を出すことができました。ただ、新型コロナウイルス感染症の影響により人流や交通量が減り自動車保険の損害が減ったことや、株式市場の活況による運用収益の上振れなど、一過性のプラス要因もありましたので、こうしたバイアスを排除して冷静に実力を評価することを常に意識しています。
2022年度の目標設定においては、2021年度の一過性のプラス要因を取り除いたうえで、実際の実力値はどこまで上がってきているのかを何度も現場と話し合い計画を立てました。その結果、実力値ベースで昨年度実績と同水準まで成長できると考えています。そして、このように業績が順調に推移している今だからこそ、油断することなく冷静かつ適切に社会の変化を把握し、次の打ち手を考えなければなりません。地球温暖化や人口減少などが私たちの生活やビジネスに与える影響や、日々変化し続けるお客さま・社会のニーズを十分に感じ取れているか、自分自身に問い続ける必要があります。社会の変化やその変化への対応への感度が鈍くなってはいないか、という問題意識です。順調な業績にあぐらをかき、お客さまの変化に気づかなくなるといずれ見放され、成長できなくなります。お客さまのニーズに向き合い、社会の中で役割を果たすためには、私たちがレジリエンスを高め、持続的な成長を図る必要があり、そのためには足元での事業計画だけでなく、将来に向けた中長期的な対策を今から実行する必要があります。
その具体策として進めているのが、グループベストの考えにもとづいた「コングロマリット・プレミアム創出」への取組みです。これまで安心・安全・健康のテーマパークへのトランスフォーメーションや、それを支えるガバナンスの改革を実施してきました。今後はさらなる飛躍に向けて、グループの求心力を強め、合理的なグループベストのリスクテイクを行うことが必要となります。わかりやすく言えば、グループ各社が1つの会社だったらという判断基準で、リスクテイクを行っていくということです。まずは、早期に効果を発揮しうる保険事業において「保有・再保険」、「資産運用」および「マルチナショナルビジネス」の3つの分野を対象にプロジェクトを開始しました。
グループベストの理念にもとづいて機能させるためには、理想や理屈だけではなく、組織のあり方や評価など細部の制度設計が必要です。そこで、グループCEOの諮問機関であり、執行部門の最上位の会議体であるGlobal Executive Committeeの下に、私が責任者となるステアリングコミッティを設置しました。各事業オーナーが参画するとともに、先述した3分野のワーキンググループにおいて、グループベストを徹底的に追求し、具体的な施策・アクションへの落とし込みを行い、追加的な利益創出を可能とする体制としています。コングロマリット・プレミアムを真に創出した保険グループは世界的にも稀有ではないかと思います。ステークホルダーの皆さまに評価いただけるよう結果を出すことにコミットしていきます。
さらに、「つなぐ・つながる・つなげる」というキーワードのとおり、例えば、SOMPOの持つ世界有数のシニアマーケットのデータや生の声を、損害保険や生命保険のソリューションの開発に活用するなど、各事業が1つのSOMPOとしてグループベストでつながり、安心・安全・健康な社会の創造に資する新しいサービス・ソリューションを提供することで、1+1+1を3ではなく、それ以上の価値を創造する、これこそが私が目指しているコングロマリット・プレミアムの意味するところです。
これまで中長期的な話を中心にしてきましたが、残り2年となった中期経営計画の達成に、全社員がこだわって進んでいきます。私はSOMPOを多様な人材がいきいきと輝きながら失敗を恐れずにチャレンジできる企業グループへと変革し、お客さまのニーズに応えるソリューションの提供を通じて次世代に安心・安全・健康な社会をバトンタッチする自らのミッション完遂に向けて、全力をあげて取り組んでまいります。ステークホルダーの皆さま、どうぞご期待ください。
私はサッカーが盛んな埼玉県で育ったことから、幼少期から大学までサッカーに打ち込みました。大学在学時にサッカー王国であるブラジルに留学しましたが、そこで得た経験が私の価値観に大きな影響を与えました。ブラジルでは当時約150万人もの日系人の方々が在住しており、大きなコミュニティを形成していました。私は地球の反対側にいる日系コミュニティが築き上げてきた偉大なレガシーに感銘を受けました。過去に異国の地へ渡った多くの先輩方が大変な苦労をされながらも、長年にわたってブラジルの方々と真摯に向き合ってきた結果、ブラジルでは日本という国や日本人に対する信頼が醸成されました。そのおかげで、20歳の日本人である私がブラジルで大切に扱ってもらえたのです。この経験を通じて私は、「ブラジルへの恩返しがしたい」、「日本とブラジルをつなぐ懸け橋になりたい」といった、人と人をつなぐ、国と国をつなぐことを強く意識するようになりました。その後、ブラジル留学で培ったポルトガル語の通訳のアルバイトをきっかけとした縁を通じて、当時ブラジルに進出していた安田火災(現損保ジャパン)に入社することとなりました。
入社後は企業営業、経営企画、海外子会社の経営、そして転職を経て介護事業の経営などに携わってきました。諸先輩方のご指導のもとさまざまな経験をしてきましたが、その中から2000年からのニューヨーク勤務時の経験についてご紹介します。
当時、当社の米国現地法人は厳しい経営状況であり、私は再建に向けて日々闘っていました。その最中の2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件に遭遇しました。毎日出社していたワールドトレードセンタービルに航空機が目の前で衝突し、真っ赤な炎の塊が突き抜けていった光景を今でも鮮明に覚えています。私は、混乱と喧騒、もくもくと煙が立ち上る中を無我夢中で走り抜け、なんとか無事に逃げることができましたが、一歩でも間違えていれば命を落としていたと思います。それ以来、「自分は生かされている」と考え、今この一瞬を悔いのないように全力で取り組むことを強く意識するようになりました。
その後、無事に米国現地法人の経営を軌道に乗せることができ、帰国して経営企画部門に配属となりました。私は、世界・日本の人口動態のトレンドをふまえると、今後グループの成長を支えるのは海外マーケットであると考え、海外事業強化の必要性を主張しましたが、当時のマネジメントが下した結論は国内事業への注力であり、私の想いは叶いませんでした。意気消沈した私は自分の力不足を嘆きつつも新たな挑戦を目指すべく転職を決意しました。転職した先は外資系金融機関でしたが、ここでも2007年9月に顕在化したサブプライム住宅ローンに端を発した金融危機という大きな試練に向き合うことになりました。
紆余曲折がありましたが、その後再び、縁があって当社に入社することとなります。そのきっかけもブラジルでした。当社は、その後も海外事業へ打って出るか否かの侃々諤々の議論をしていましたが、経営陣の交代を契機に、海外事業に注力する方針が打ち出されることとなります。その最初の一歩として2009年にブラジルで保険会社を買収することになり、諸先輩方からお声がけをいただいたこともあり悩んだ末に私は再入社を決めました。再入社後は、ブラジルの買収先企業に文字通り単身で乗り込み、現地マネジメントメンバーの一員として事業の拡大に尽力してきました。
SOMPOとの縁がブラジルであったように、人生には多くの「運と縁」があることを実感しています。これまで自分を支えてくれた数多くの出会いに感謝するとともに、これからも人との「つながり」を大切にし、人生を歩んでいきたいと思います。