海外保険事業オーナー
ジェイムス・シェイ
自然災害の激甚化、新型コロナウイルス禍によるサプライチェーンの寸断、想定を上回るレベルのインフレーションなど、これまでの延長では考えられなかった事象が立て続けに発生しています。SOMPOグループは、このようなニューノーマルに向き合い、あらゆるリスクから人々を守るために、中期経営計画の基本戦略において「規模と分散」を掲げ、レジリエンスの向上を図ってきました。
取組みの柱は、グローバルでの規模の拡大とリスク分散の進展と国内における収益構造改革です。このパートでは、この2つの取組みを牽引した海外保険と国内損害保険の2つの事業の取組みを紹介します。
国内損害保険事業が利益の過半を稼ぎ出す事業ポートフォリオから脱却し、利益安定性を高めるべく、現中期経営計画では「規模と分散」を掲げ、海外保険事業への経営資源配分などに取り組んできました。その結果、2年間で海外保険事業が大きく成長し、2022年度はグループ全体に占める海外保険事業の利益割合が43%に至るなど、事業ポートフォリオの分散が進展し、レジリエンス向上を果たしました。
SOMPOインターナショナルの2022年度の修正利益は7億330万ドル(2021年度比 30.8%増)と力強い成長を見せ、SOMPOグループ全体の利益増加に大きく貢献しました。業界全体に影響を及ぼす大規模な自然災害の影響があったものの、適切なエクスポージャー管理・ポートフォリオの分散化・規律あるアンダーライティングに継続的に取り組むことでこのような結果を達成できました。コマーシャル分野のコンバインド・レシオは93.5%を記録、当年事故発生ベースのコンバインド・レシオは2021年度比で0.8pt改善し92.1%となりました。
グロス保険料は2021年度比11.3%増加の158億ドルとなり、大きく増収しました。コマーシャル分野では、レート環境が引き続きポジティブであること、また作物価格の上昇が農業保険料を押し上げたことから、2021年度比9.9%の成長となりました。元受事業に加えて再保険事業もこの成長に貢献しており、再保険事業はグロス保険料40億ドルを超え、コンバインド・レシオは90.1%となりました。コンシューマー分野においても、力強いオーガニック成長を記録しており、為替やインフレーションの影響を除き、全体で2021年度比で2けた台の成長率となりました。
※グループの修正連結利益における海外保険事業の割合は、一過性要因を調整した平年値ベースの数値で算定
SOMPOインターナショナルは、これまでマーケットをリードするような成果を残してきましたが、よりシンプルで魅力的な商品・サービスの提供を通じてお客さまをサポートしていくことにより、さらなる成長を遂げる機会があると考えています。現在は米国と英国における事業に重点を置いており、これにより、世界トップ10のP&C保険市場や新たな地域に進出し、リテールマーケットやエクセス&サープラスマーケットに参入する機会を得ることができると考えています。コマーシャル分野ではカナダや欧州大陸、東南アジアへの地理的拡大や、ブラジルのお客さまにより広範なサービスを提供することが成長のキードライバーとなります。また、魅力的なマーケットや機会があれば、出再者(再保険顧客)に対してより多くのキャパシティを提供する準備もできています。
SOMPOインターナショナルは、こうした新しいお客さま・新しいマーケットへのSOMPOブランドの進出、そして地理的拡大とお客さまにフォーカスした取組みにより、グループ全体の成長にコミットしていきます。
海外保険事業オーナー
ジェイムス・シェイ
SOMPOインターナショナルはこの数年でコマーシャルP&C保険および再保険のマーケットにおけるリーディングプロバイダーに成長しました。当社グループは130年以上の歴史を持ち、全世界で100万以上のコマーシャルおよびコンシューマーのお客さまへサービスを提供し、350億ドル以上の損害保険事業を展開しています。今こそ、私たちはブランド認知度をさらに高め、規模と強固な財務基盤を活かし、他のグローバルP&C保険プロバイダーに引けを取らないレベルで既存・将来のお客さまのサポートに注力する時が来たと信じています。
高いパフォーマンスを発揮している組織は最高の人材を惹き付け、エンパワーメントの文化を生み出します。私たちは、マーケットをリードする結果を残すことで、社会や地域に対する還元を続けてまいります。
損害保険ジャパンでは、変化の激しい環境においてもお客さまの安心・安全・健康を支えるという使命を果たし続けるため、2019年度以降、「プライシングの適正化」「アンダーライティングの強化」「生産性の向上」の3つを柱とする収益構造改革に取り組んできました。
結果として、現中期経営計画の最終年度である2023年度には、当初の目標を上回る765億円の利益押し上げ効果を見込んでおり、着実にレジリエンスの向上に寄与しています。
*利益効果額は、2020年度対比(税引後)
プライシングの適正化については、主力商品である火災保険や自動車保険の商品内容および保険料設定を見直すことなどにより、収益性の向上を図ってきました。
また、アンダーライティング面では、パランティアのAIアンダーライティングを活用することで、損害率が高い契約の収益改善を実現しています。
生産性に関しては、デジタルを活用した業務プロセス改革を推し進めることで生産性を向上させ、要員の最適化を図っています。
これら取組みの効果が着実に発現している一方で、想定を超える自然災害の頻発化やインフレ進行など、昨今の事業環境は大きく悪化してきました。今後も持続的に保険会社としての責任を果たすためには、さらなる収益改善が必要と認識しています。
これまで収益構造改革として実施してきた、プライシングの適正化やパランティアの技術を活用したアンダーライティングなどの取組みを着実に継続しながら、踏み込んだ収益改善策とさらなる生産性向上に取り組み、中長期的に事業費率31%台を目指します。
火災保険の収益改善は喫緊の課題であり、2020年代半ばまでに黒字化することを目標とします。
黒字化に向けた具体的な施策としては、保険料率の抜本的な見直しや、収益性の低い契約の補償見直しによるポートフォリオ改善などを実行します。
自然災害の頻発化、大口事故の増加などの事業環境の変化をふまえ、収益改善に向けた取組みを加速させていきます。
*損害保険ジャパン(除く自賠責・家計地震)
国内損害保険事業オーナー
白川 儀一
現中期経営計画で取り組んできた収益構造改革については、グループの強みであるパランティアのデジタル技術を活用した収益改善の取組みが進展したことで、順調に推移しています。
加えて、当社の商品・サービスをお客さまからご評価いただいたことで、中期経営計画で掲げた正味収入保険料(自賠責・家計地震除く)の最終年度での目標を、1年前倒しした2022年度に達成しています。
一方で、自然災害の激甚化・頻発化など、一過性ではない大きな経営環境の変化が到来しており、特に火災保険については、損害率が高止まりし、収益を圧迫しています。
このため、「収益回復に向けた新たなアクション」として、従来の取組みから「一歩踏み込んだ」対策を実行します。具体的には徹底的な生産性向上による事業費削減に加え、直近の収益状況をふまえ、次回の商品改定において料率水準の見直しや、アンダーライティング面の強化を行う予定です。
当社の「公共福祉と、国民生活の安定・産業発展への貢献」という創業時の理念は、現在でも変わりません。社会インフラとして定着している火災保険を持続可能な保険商品としてこれからも提供し続けるため、収益力の回復に取り組んでまいります。
レジリエンスの強化に向けては、SOMPOの一つひとつの事業が財務規律・保険引受における専門性・業務効率・市場競争力を継続的に向上させていくことが不可欠です。そして変化し続けるお客さまのニーズやリスクに応えるためには、専門性をSOMPOグループ横断でレバレッジすることが重要となります。SOMPOがグループとして利益を生み出しながら成長・発展していくためには、資本効率の高い組織を構築し、事業部門間の連携を深めることでレジリエンスを高めていくことが必要であり、このような考えのもと、私たちは「One SOMPO」プロジェクトを立ち上げ、協働と強靭な事業体制の構築に取り組んでいます。
SOMPOグループの各事業をつなげるために、執行部門の最上位の会議体であるGlobal ExCo(Global Executive Committee)の傘下にステアリングコミッティを設置し、グループCOOを責任者、各事業オーナー、グループCFO/CSO、グループCHROをメンバーとしたプロジェクトチームを組成し、2022年度から取組みを進めています。
2022年度は「保有・再保険」、「資産運用」、「マルチナショナル・ビジネス」の3つの分野を主要テーマに掲げてワーキンググループを設置して、主にグループの保険ビジネスにおけるレジリエンスの強化に取り組んできました。
その成果として、2023年度は、保有・再保険分野における損害保険ジャパンとSOMPOインターナショナルとの連携加速によるリスクリターンの向上、資産運用ではSOMPOインターナショナルへの2,000億円の資本移転や運用多様化により150億円の効果が発現する見込みです。また、マルチナショナル・ビジネスにおいても、プラットフォームを確立し、損害保険ジャパンとSOMPOインターナショナルとの連携による契約獲得が続いています。
2024年度からは新たな中期経営計画がスタートする予定であり、私たちの強みをグローバルにレバレッジすることで、これまで以上にグループのレジリエンスを向上させ、利益を追求していきます。