(2023年8月発行)
3

SOMPOのパーパス経営

未実現財務価値の向上に向けて

表出する変化・アウトカムのエビデンス

表出する変化の進化および中長期的なアウトカムの試算に向けた取組み

当社では、MYパーパス起点の人的資本の向上に向けた取組みがエンゲージメントを高め、チャレンジなどの表出する変化の増加を通じ未実現財務価値を創出すると考えています。今年度は、そのメカニズムを可視化するとともに、エンゲージメントがアウトカムの向上に寄与するエビデンス(事例・データ)の蓄積および分析と中長期的なアウトカムの可視化(社会インパクトの試算等)に取り組んできました。本パートでは、その取組みの一部をご紹介します。

表出する変化のメカニズムの検証

エンゲージメントが高まった個人や組織は、パーパスの実現に向けて、「チャレンジ」や「コミュニケーション」に代表される具体的な行動を起こしていきます。そして、社内外のステークホルダーを巻き込みながら、協業を通じた知の進化・蓄積と組織・事業の行動へのスケール化・高度化を経て、アウトカムを生み出します。当社では、この一連のプロセスを「表出する変化」と呼び、その可視化およびデータ・事例による検証に取り組んでいます。ただし、表出する変化からアウトカムに至る変化のメカニズムは各社・各部門で異なり、まだ十分に明らかにできてはいません。今後、各領域や事業の戦略・施策などとの連動を図りながら、取組みを進展させていきます。

1エンゲージメントが高い組織は、高付加価値を生むための業務に充てる時間が30%前後多い

エンゲージメント・スコアの上位25%の組織では新規営業などの高付加価値を生むための業務に従事する時間が、平均以下と比較し30%前後多いという結果が出ています。

※検証にあたり、高付加価値を生むための業務とは、自身の業務のうち「顧客に価値ある商品・サービスを提供するための業務に費やす時間の割合」として定義しています。

エンゲージメントの向上やチャレンジの増加は、業績や品質の向上に影響を与える

チャレンジ意欲やエンゲージメント・スコアと業績や品質の関係を、当社グループ組織内に蓄積されているデータをもとに、回帰分析を行いました。結果として、エンゲージメントの向上やチャレンジの増加を通じて顧客満足度などの品質の向上や業績の向上に寄与していることを裏づける複数のエビデンスを定量的に特定しました。 (例:エンゲージメント・スコアと自動車保険金支払いのお客さま満足度指数の回帰係数は6.36pt)

23現場で生まれている変化の実例

事例1大規模災害への保険金お支払い業務の効率・効果向上に向けたグループ横断でのシステム開発

被災地のお客さまのいち早い生活再建に向けて貢献したいとの強い想いから、令和4年福島県沖地震災害の保険金お支払いに際して、パランティアが提供するデータプラットフォーム『Foundry』を活用し、これまでにない災害時の保険金お支払いの仕組みを開発・導入しました。業務オペレーションの大幅な改善により迅速にお客さまへ保険金をお届けすることができました。

事例2中核市へのヘルスケアサービス『血糖コーチング』提案を通じた県のスマートシティモデル事業への参画
Linkx 血糖コーチング

「自分が関わるすべての方が一生の中で少しでも健康で幸せを感じられるよう自分にできることを考えて行動する」というMYパーパスのもと、自社が提供するヘルスケアサービス『血糖コーチング』を活用した健康増進・重症化予防を市に提案。その結果、市を中心とするコンソーシアムが結成され、血糖コーチングを用いた「ICTを活用した健幸なまちづくり(糖尿病予防)事業」が立ち上がり、県のスマートシティモデル事業に採択されました。

事例3社会課題の解決に資する新保険商品『Travelキャンセル保険』の開発
Travelキャンセル保険

今までの保険の「できない」を「できる」に、保険の新しい体験と価値を創造するという強い想いで旅行予約を後押しする『Travelキャンセル保険』を開発・提供。ユーザー、旅行会社、宿泊施設・交通機関の「三方よし」を実現し、国内旅行需要回復の一助を担いました。

4SOMPOが生み出す社会インパクト

社会インパクトの将来財務へのつながり

インパクトパスの整理と金銭価値化により、事業規模を超えて生み出される社会インパクトを明らかにしていきます。

以下の4つのパスが社会インパクトから将来の財務価値につながるルートです。これらのパスを通じて、人的資本の向上やパートナー企業・顧客の増加につながり、財務価値向上へと至ると考えています。

  1. ブランド価値の向上
  2. 消費者の購買志向の変化
  3. 従業員エンゲージメント向上
  4. 実態に即したルールの形成
図:<介護事業の例>人的資本の取組み→事業→企業財務、社会インパクト
社会インパクトの算出事例:『egaku』が創出する社会インパクト

『egaku』は、デジタル化支援サービス、データ活用サービス、プロフェッショナルサービスの3つから構成されており、これらのサービスの展開によって介護事業者の生産性向上、職員のエンゲージメント向上、介護の仕事の魅力向上を実現していきます。2040年には22万人*1の介護人材需給ギャップを解消し、最大88万人*2の高齢者を支えることを目指します。これによって介護を理由とした離職などを防ぎ、GDP換算で最大3.7兆円の社会インパクトを創出すると試算しています。

図:<介護事業の例>人的資本の取組み→事業→企業財務、社会インパクト

*1 施設系の30%、在宅系の10%に『egaku』を展開し、導入事業者はSOMPOケア同様に必要人材の減少 、介護人材の増加を達成すると仮定

*2 規制緩和により1人の介護人材が4人の高齢者を支えることができたと仮定