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(2024年8月発行)

介護事業CEO

鷲見 隆充

グループCXO

渡部 一文

国内生命保険事業CEO

大場 康弘

2024年度からの中期経営計画では、生命保険事業、介護事業、コーポレート・ウェルネス事業をあわせ持つというグループの特性を活かし、ウェルビーイング事業を立ち上げました。「つなぐ・つながる」をキーワードに、日本が直面する少子高齢化によってもたらされるさまざまな社会課題に対して、ワンストップで、シームレスに商品・サービスを提供できる姿を目指していきます。

この「SOMPOウェルビーイング」を牽引する3人の役員による鼎談を通じて、どのように社会課題を解決し、中長期の成長を遂げていくかをお伝えします。

SOMPOウェルビーイングのビッグピクチャー

渡部 私たちがマザーマーケットとする日本においては、少子高齢化により、支える人と支えられる人とのバランスが大きく崩れています。なかでも介護サービスの需要は増加の一途をたどり、介護を必要とする年齢層だけでなく、いつ介護が必要となってもおかしくない予備軍まで含めて考えると、今後多くの人が人生を通じて介護との関わりを避けられない「1億総介護時代」が到来することになります。

この「1億総介護時代」において、寿命が延びることによって起こってくるさまざまな不安、つまり健康、介護、老後資金の3つの「不」に対して、SOMPOならではの解決策を提示することで、長生きして年を重ねることをポジティブに考えることができる社会を創りたい。それが私たちの目指す姿です。

SOMPOグループには、各事業が持つ顧客基盤に加え、健康応援というユニークな価値に取り組んできた国内生命保険事業、介護サービス提供で培ったノウハウや業界におけるネットワークなど強固な事業基盤を持つ介護事業が存在します。このようなSOMPOグループならではの強みを活かして、3つの「不」の解消を目指していきたいと考えています。

図:生涯にわたるソリューションの提供
									(LTV:Life Time Value・利益の持続的な拡大)
									ウェルビーイング
									生涯の伴走者としてInsurhealth®による健康寿命の延伸・万が一の場合のサポート
									多様なニーズに応える新商品・サービス
									特定保健指導・健診受診代行 など
									介護サービス(在宅・施設)
									
									3つの「不」(社会課題)
									健康の「不」平均寿命と健康寿命のギャップ:約10年
									老後資金の「不」老後資金を自分で備えられる人:1割
									介護の「不」家庭における介護の担い手は 減少(介護需給ギャップの深刻化)

各事業の持つ強み

大場 日本における人口動態の変化は今に始まったことではありません。SOMPOひまわり生命では、2016年から「健康応援企業」への変革を掲げ、生命保険の伝統的な役割である万が一の備えに加えて、お客さまが「元気で長く生きられる」ことを目指してきました。その実現のために、保険本来の機能(Insurance)と健康応援機能(Healthcare)を組み合わせた「Insurhealth®」を新たな価値と見定め、2018年から提供を続けてきました。その結果、Insurhealth®の累計販売実績は160万件に至り、当社の成長ドライバーになりました。しかし、私は真の健康応援企業への変革はまだ果たせていないと考えています。これまでの取組みをもっと磨き上げ、日本社会が抱える健康の「不」の解消に大きく貢献できる真の健康応援企業になる。これが国内生命保険事業の中期経営計画で目指す姿です。

鷲見 「SOMPOの介護が日本の介護を変える。そして、日本の未来を創る。」これが私たち介護事業の目指す姿です。全国25の都道府県に、施設サービス470拠点、在宅サービス640拠点を展開し、約8.5万人のご利用者さまに介護サービスを提供する事業規模を有しています。また、2023年には介護業務支援ソフトウェアの提供を通じて全国の介護事業者とのネットワークを持つNDソフトウェアをグループに加えました。

介護業界の最大の課題は働く人が圧倒的に足りなくなることです。つまり介護人材の需給ギャップの拡大です。そのような事態に備え、これまでデータやデジタルを活用してオペレーションの効率化を図るとともに、人は人にしかできない介護に注力するなどの品質を伴う生産性向上に取り組んできました。このような持続可能な介護事業モデルを私たちは「未来の介護」と呼んでおり、この中期経営計画における取組み課題の一つに位置づけています。そして、持続可能な介護事業モデルのノウハウ、サービスを私たちが持つプラットフォームを通じて他の介護事業者に提供していくことで、介護の「不」の解消に貢献していきます。そして生涯の伴走者のアンカーとして、人生の最期にお客さまに寄り添い、最大限の力を発揮する存在でありたいと考えています。

どのような事業モデルを構築していくのか

写真:奥村 幹夫、RIZAPグループ代表取締役 瀬戸 健 氏

渡部 国内生命保険や介護はグループのなかで確固たる力を持った事業であり、BtoBtoE*向けの健診等のコーポレート・ウェルネス事業も一定の事業規模を誇っています。これまではこれらの事業は独立して別個に展開してきましたが、SOMPOウェルビーイングでは、「つなぐ・つながる」をキーワードに取り組んでいきます。

まずはグループの保険と介護など事業間を「つなぐ」ことに取り組みます。健康に関するさまざまなサポートを行うサービスがしっかりと連動しお客さまにサービスのつながりを感じていただけることが大きな視点です。例えば、健診を受けられたお客さまに対して健康サービスをご提案するワンストップサービスを提供していくことに取り組みます。また、例えば介護施設のご利用者さまのお子さま世代など、お客さまご本人だけでなくそのご家族とも「つながる」。さらにはサービスを受けられたお客さまの行動をデータ化し、グループの各社にまたがるデータをつなげ、一つの大きなデータベースを構築する。そのデータに基づくサービス提案につなげていく。最後には介護サービスの提供も可能となる。そのようなことを考えています。

2024年6月に資本業務提携契約を締結したRIZAPグループのサービスは、私たちにとってのミッシングピースです。今までは健康サービスの提供に際して「運動してください」「歩きましたか」といったアプローチしかできませんでしたが、「chocoZAPで運動しましょう」といったより具体的な提案ができるわけです。このリアルのサービスを手に入れた意義はとても大きいと考えています。

このようにお客さま起点で3つの「不」に応えるソリューションの提供を通じて、お客さまとそのご家族と「長く」「厚く」つながることで、Life Time Value(LTV)を持続的に拡大していき、グループの中長期的な成長に貢献していく。このようなサイクルを積み上げていくことで、ユニークな価値を提供するグループとしての認知を高め、SOMPOブランドがお客さまに選ばれる状態を創り出していきます。

* Business to Business to Employee

図:“つなぐ・つながる”のコンセプト
										事業間を“つなぐ”、お客さまと“つながる”
										↓
										LTV拡大のイメージ
										「長く」「厚く」つながることでLTVを持続的に拡大
										お客さま・ご家族(期間・頻度・数)→SOMPOグループ→3つの「不」解消に向けたソリューション→つなぐ・つながる顧客体験(リアル・デジタル)

各事業の役割

大場 SOMPOウェルビーイングにおいて、ひまわり生命はお客さまが実際に健康になっていくことを実証していく重要な役割を担います。また「ひまわりファン」つまり、健康応援企業として当社が提供する保険商品とヘルスケアサービスの双方の価値に共感いただいているお客さまを増やすことを通じて、ウェルビーイングの取組みにおける顧客基盤の役割を果たすとともに、お客さまとつながり健康に関わるデータを取得・蓄積していく役割も担います。

現在500万人を超えるひまわりファンに保険商品もしくはヘルスケアサービスの健康応援機能の活用をお勧めすることにより、2026年度には、健康に向かう行動変容の取組み(健康行動)を起こしたお客さまを55万人まで増やしたいと考えています。

いま議論しているのは、55万人のコアとなるお客さまに対してどのようにして最適なサービスを提供していくかということです。この55万人のお客さまのなかには、ご本人が介護施設に入られる方やご家族に介護が必要となられる方が一定数出てきますし、ヘルスケアサービスにより一層興味を持たれる方、あるいは損害保険を検討される方もおられるでしょう。例えば、介護施設に入りたいという方にはしっかりとおつなぎする。運動したい方にはchocoZAPをお勧めする。認知症に備えたいというお話があれば、そのニーズにあったサービスをご紹介する。さらに、今後はポイントプログラムを構築して、お客さまがグループのサービスを受けて貯められたポイントで、グループのいろいろなサービスにお支払いいただけるようなことも検討していきます。こういった心地よさをお客さまに感じていただける世界観を極めていこう、なじみの店に行くとすっと好みの料理が出てくるような、いわば「常連の心地よさ」を私たちが提供する価値にしていこうと考えています。

データについて申しあげると、Insurhealth®では何らかの健康活動のデータが蓄積されており、そのような方が介護施設に入られたりヘルスケアサービスを受けられたりするときには、そのデータを参照し「あなたのことはよくわかっています」という話ができます。「はじめまして」ではない「常連の心地よさ」が「つなぐ・つながる」の要素になると考えています。

鷲見 SOMPOケアでは大きく2つの役割を担っていきます。一つはデータやテクノロジーを活用して磨き上げたSOMPOケア自身のオペレーションのノウハウ、サービスを広く提供することにより、介護の「不」の解消に貢献していくことです。現在の人口動態を考えると、平均寿命と健康寿命のギャップが縮まっていったとしても、最期には介護サービスを必要とされる方がいらっしゃいます。長生きして年を重ねることをポジティブに考えることができるように人生の最期を幸せに過ごせる社会を創ることが必要であり、そのためには私たちが品質の高い介護サービスを提供し続けられることが不可欠と考えています。

もう一つは、NDソフトウェアのネットワークを活用するなどして、他の介護事業者と「つながる」ことです。SOMPOウェルビーイングでは今後3つの「不」に関するさまざまなサービスを提供していくことになります。これまで事業化を進めてきた介護事業に関するノウハウ・サービスだけでなく、介護を必要とする前後のサービスの展開を想定し、他の介護事業者を中心とした仲間づくりに取り組んでいきます。

SOMPOグループを「つなぐ」という観点で言うと、SOMPOケアが介護サービスを提供しているご利用者さまのなかには、まだ自立して生活できる方々もたくさんいらっしゃいます。そういった方がグループの健康に関するサービスやRIZAPのサービスにつながっていくと、健康の「不」の解消にもつながると思います。この取組みは始まったばかりであり、現時点ではまだグループ内の「つなぐ・つながる」が十分な状況ではありませんが、グループのサービスを受けられるお客さまが必要なときに、SOMPOケアの介護サービスを受けられる仕組みの構築などを実現したいと思います。

今後の取組み

渡部 この中期経営計画期間においては、生命保険、介護、健診やメンタルヘルス事業等のコーポレート・ウェルネスなどのグループの事業の「つなぐ・つながる」をより強固なものにし、各事業が持つ強みやさまざまなアイデアを一つでも多く具現化することから始めたいと考えています。

お客さまとの接点については、オンラインとオフラインで場所を選ばずに提供できる仕組みを作っていきます。その最初のステップとして、介護を軸とした3つの「不」に応える相談窓口を年度内に3店舗展開していきます。お客さまとの接点をその家族とのつながりにまで拡大し、保険とその周辺サービスを合わせた価値をお届けするチャネルを確立していきたいと考えています。また蓄積された健康行動のデータを分析し、介護の予測や資金の予測を行い、お客さまの行動変容につなげていくことも考えていきたい。

さまざまな実証実験を進めながらアジャイルに新しいサービスを創っていくことをやっていきたいと思っています。そのなかでグループにはないミッシングピースがあれば、M&Aや資本提携などを通じてサービスを増やしていくことも積極的に検討します。例えば老後資金の「不」に対しては、今はまだ十分なソリューションがなく、検討領域の一つと考えています。

目指す姿に向けて、この3年間は大場さんや鷲見さんには自社の強みをしっかりと磨きこんでいただき、私は、先ほど申しあげたビッグピクチャーをより具体化し、お客さま接点の充実、データの蓄積、お客さまの行動変容にもとづくサービス提案の仕組みといったSOMPOウェルビーイングの事業基盤の構築にしっかりと取り組んでいきます。