統合レポート2024(オンライン版)
海外保険事業
包摂性を高め、多様な人材が誇りを持って働ける組織を通じて、グループの利益成長に安定的に貢献していきます。

海外保険事業CEO
事業CEOメッセージ
SOMPOグループは、海外における保険・再保険事業の拡大・強化に取り組んでいます。海外保険事業を通じて、新規・既存市場において収益性の高い成長を実現するとともに、人材を育成し、新たなメンバーを迎え入れ、社員たちに成長を促し、ダイナミックな業界環境の中で一歩先んじるリーダーとして活躍できるよう全力で取り組んでいます。そして、規律あるアンダーライティングにより、引き受けたリスクから適切なリターンを得ることで、グループの利益成長に安定的に貢献することが海外保険事業のミッションです。
海外保険事業の成長のドライバーは、継続的な地理的拡大です。私たちは、北米、欧州、中東、アジア、中南米を含む世界28の国と地域にグループ会社、支店、駐在員事務所を展開しています。海外保険事業は、急速に変化するリスクに迅速かつ機敏に対応するため、社員の専門性を高め、その深い知識と洞察力を駆使し、卓越した水準で必要な商品を提供することで、お客さまや保険ブローカー・パートナーとの関係強化に日々努めています。
海外保険事業では、約9,500人の社員がこのような専門性を駆使して、複雑な課題をわかりやすくし、その解決に取り組んでいます。めまぐるしく変化する世界の中で、私たちは複雑なリスクや技術的なデータやシナリオをわかりやすく集約する能力を強みとし、それに誇りを持っています。私たちは「これが最もシンプルで、最も効率的で、最善な方法か」と常に自問自答しています。そのようにして、私たちはお客さま、パートナー、そして従業員に適切なソリューションと価値を提供することができると考えています。
日本での事業の歴史や伝統は、私たちにとって非常に重要であり、私たちの展望に影響を与え、私たちの経営理念の基礎となっています。私たちは、クライアントやパートナーとの信頼、誠実さ、透明性に支えられた長期的な関係を重要視しており、私たちのコミットメントの深さや広さは、当社に対する信頼をさらに高め、長期的で持続的な成功の基盤となっています。
海外保険事業の中心にあるのは、最も重要な資本である人材であり、私たちは「Train、Retain、Attract」をモットーにしています。海外保険事業では、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が働いています。最高のパフォーマンスを発揮できる職場を提供し、魅力的な人材を確保するためには、機会と包摂性が極めて重要であり、お互いが違いを尊重し、評価し、称賛し合う環境づくりに努めています。積極的にお互いに耳を傾け、意見交換し、私たちが生きる複雑な世界へ好奇心を持つことは、お客さまをよりよく理解し、長期的な成功を収めるための基盤であり、社員が学び、貢献し、成長意欲をかき立てられる職場を提供することにつながります。
私たちは、社員がSOMPOで働くことに誇りを持てるようにしたいと考えています。その鍵は、組織をつないでいくことだと考えています。私たちがどのような存在であり、どのような役割・機能を持っているかに焦点を当てることで、社員をはじめとするすべてのステークホルダーのニーズに、より効率的かつ効果的に応えることができます。これを実現するために、海外保険事業では、社内コミュニケーションを活性化して、人をつなぎ、共通の帰属意識となるSOMPOブランドの醸成に力を入れています。
私たちは、組織の包摂性を高め、従業員に発言の機会を生み出すための新たな場を模索し続けています。海外保険事業では最近、「CEO Advisory Council」を発足させました。この委員会には、世界中から13人のプロフェッショナルな若手社員と、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋の各地域のリーダー、委員会から指名された10人によって構成されています。透明性とエンパワーメントに重点を置くこの委員会は、それぞれが持つユニークな視点から、組織の強み、弱み、機会、脅威について率直なフィードバックと多様な視点を提供することをミッションとし、毎月議論を行っています。
また、意思決定と業務効率を向上させるため、人工知能(AI)やデータなどのテクノロジーにも投資しています。人が資本となるビジネスであるため、単純で時間のかかる仕事をまかせることができる新しい技術を取り入れることで、社員がイノベーションに注力し、お客さまやパートナーとより深い関係を築き、情報にもとづいた意思決定をより迅速に行えるようにしたいと考えています。
海外保険事業の成長に向けた地理的拡大の取組み
各地域において、アンダーライターの追加採用や新商品投入などを通じて、2023年度に開設した拠点を拡大
【今後について】
- 効率性を重視し、あらゆることに挑戦する
- 収益性の高い顧客基盤を拡大する
- 人とカルチャー
- 組織をつなぎ、距離感をなくす
- テクノロジーへの投資
- 財団を通じたコミュニティへの新たな投資
海外保険事業として、究極的には、数多くのお客さまをひきつけ、その基盤を拡大していくことが重要です。これまで、再保険事業はグローバルに展開してマーケットをリードしてきましたし、元受保険事業は主に米国と英国のマーケットに注力して成長を遂げてきました。今後数年間は追い風が吹いており、新規および既存の保険マーケットにおいて、引き続き収益性を伴う成長を遂げる機会があると考えています。一方で、中長期的な視点で見たときには、さまざまな困難に直面する可能性があります。
このような中長期的な経営環境においてもお客さまを拡大していくために、今後も右記に重点を置いた戦略を展開していきます。
業績概況

海外保険事業の2023年度の業績は好調を維持し、修正利益は11億5,010万米ドルとなり、グループの修正利益の56%を占めるに至りました。
再保険
再保険のグロス保険料は、契約更新時の増収などによって42億米ドルとなり、前年同期比1.8%増となりました。スペシャリティとプロパティにおいて増収したものの、一時的な要因によるカジュアルティの減収によって一部相殺されました。
保険引受利益は、4億1,940万米ドル(保守的な備金積増影響を除く)となり、前年度の3億4,560万米ドルから大幅に増加しました。2022年度のコンバインド・レシオは、ハリケーン「イアン」が2022年第3四半期に上陸し、多額の損害が発生したため、90.1%でしたが、2023年度のコンバインド・レシオは88.3%でした。
北米(米国およびバミューダ事業)
北米事業のグロス保険料は47億米ドルで、全体的な保険料設定が引き続き良好でロス・コストの傾向をわずかに上回り、対前年4.8%増となりました。
保険引受利益は、前年はハリケーン「イアン」の影響により、1億8,270万米ドルであったのに対し、3億2,560万米ドル(保守的な備金積増影響を除く)となりました。保険引受利益の改善により、コンバインド・レシオは90.1%(前年に発生した一時的な影響を除く)と非常に良好な結果となりました。
グローバルマーケット
グローバルマーケット(英国、ヨーロッパ大陸、アジア太平洋地域、およびトルコ、ブラジル、アジア太平洋地域のコマーシャル事業)のグロス保険料は、ブラジルとトルコの減収により一部相殺されたものの、26億米ドルと、英国、ヨーロッパ大陸、アジア太平洋地域のオーガニック成長により対前年6.7%増となりました。
ブラジルは前年と比べてインフレ圧力が強く、トルコでは2023年度第1四半期に発生した地震の影響を受け保険引受損失が発生し、保険引受利益は7,440万米ドル(保守的な備金積増影響を除く)と前年を下回りました。英国およびヨーロッパ大陸の保険引受利益は、アジア・太平洋地域の保険引受実績と同様、当年度も小幅ながら増加しました。
AgriSompo(グローバル農業事業)
AgriSompo(グローバル農業事業)は、大豆と綿花の商品価格が下落したため、グロス保険料は対前年16.4%減の29億米ドルとなりました。加えて、地域的な集中を緩和するため、引き受け中の契約の一部を見直しました。
2023年度の保険引受利益については、6,730万米ドルの保険引受損失となりました(前年度は1,480万米ドルの保険引受利益)。2023年度の保険引受利益減少の主な要因は、グロス保険料の減少、2022年の生育期に関連した悪影響、米国の一部で干ばつが続いたことがあげられます。
コンシューマー事業
ブラジル、トルコ、アジア太平洋地域を中心としたコンシューマー事業では、2023年度の保険引受利益は1,070万米ドルとなりました(前年度は1億1,900万米ドルの損失)。保険引受利益の改善は、より良好な保険料率設定とインフレ環境から8,440万米ドルの保険引受利益の増加を記録したトルコと、主に自動車事業の損害率の大幅な低下により6,080万米ドルの改善を記録したブラジルが大きく牽引しました。アジア太平洋地域では、2022年度に比べて自動車損害が増加したため、保険引受利益は前年度比で減少しました。
コンシューマーのグロス保険料は11億4,900万米ドルと2022年度と同水準でしたが、これは2023年8月にブラジルの個人保険事業から撤退した影響があったことをふまえると、高い成果と考えています。
新中計に向けて
世界の保険市場におけるSOMPOグループの海外保険事業の地位は引き続き強固であり、2023年度までの勢いを維持・継続すべく取り組んでいきます。成長する海外保険事業がグループに貢献できるよう、戦略的取組みの拡大と地理的分散に多額の投資を行っており、それによってボラティリティの低い商品構成へと改善していきます。
海外保険事業の経営陣は、海外保険事業が持つ専門的な知見を総動員していくことで、国境や地域を越えてつながり、サービスを提供する人たちのそれぞれの志やリスク管理のニーズに合致した協働的でつながりのあるパートナーシップを実現できると認識しています。
2023年度は海外保険事業としての目標を達成するとともに、規模の拡大とグローバルで多様な保険契約の獲得によって、バランスシートをさらに強固にすることができました。2024年度もこの好調な勢いを維持し、力強いスタートを切っています。引き続き収益性の高いオーガニック成長を実現し、事業の継続的な変革を通じてグループ全体の利益拡大にさらに貢献していきます。
海外保険事業戦略の全体像

新中期経営計画のKPI


