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(2024年8月発行)

国内損害保険事業では、お客さま・社会からの信頼回復を最優先としつつ、高い独自性とレジリエンスを誇る「新しい損保ジャパン」を実現するため、事業基盤と収益基盤の変革に取り組んでいきます。

新中計における事業戦略の全体像

国内損害保険事業は、SOMPOグループの一員として持続的な成長を図り、お客さまにとって価値ある商品・サービスを創造することで、社会に貢献していきます。

2024年度からスタートした新中期経営計画では、「お客さまに、社会に、まっすぐ。」をスローガンとして掲げ、業務改善計画を着実に遂行することでお客さま・社会からの信頼回復に努めつつ、独自性とレジリエンスを追求することを基本戦略としています。その実現の手段として実践するのがSJ-Rであり、全社をあげて取り組んでいきます。具体的には、ポートフォリオ変革や営業変革、保険金サービス変革といった収益基盤を強化することで直接的に財務効果へ結びつく取組みと、品質管理・ガバナンス態勢の見直しやカルチャー変革など、事業基盤の強化を通じて中長期的に収益力の強化へつながる取組みの二本柱でビジネスモデルの変革を実現していきます。それぞれの取組みは独立したものではなく、事業基盤の変革によって競争力を強化し、収益基盤の変革で得た収益を非財務領域である事業基盤へ再投資していくという循環型の仕組みを意図しており、これにより「新しい損保ジャパン」の実現を目指していきます。

お客さまに、社会に、まっすぐ。
									独自性とレジリエンスの追求
									財務(収益基盤)← 事業基盤変革により競争力を強化、収益基盤変革で得た収益を再投資 →非財務(事業基盤)
									「新しい損保ジャパン」の実現を目指す

また、SJ‒Rの取組みのなかで、保険金サービス部門による保険金支払いの適正化や生産性の向上、商品部門による適切なプライシング、営業部門と商品部門による緊密な連携で実現する規律あるアンダーライティングなど、収益基盤を強化していくことによって、収益力の回復、収益の安定性、環境変化に対応する機動性の3つを同時に高めていきます。具体的には、2026年度に事業別ROE8%以上、E/Iコンバインド・レシオ*95%未満の達成に加え、台風リスクのコントロールや政策株式削減の加速、自動車保険や火災保険を中心とした長期契約比率の削減を目標として定めています。新中期経営計画でSJ-Rの取組みを完遂することにより、収益力の回復や成長を実現し、単一年度の収益性のみならず、収益の安定性や環境変化に柔軟かつタイムリーに対処するための機動性も備えた事業を構築していきます。

* 損害保険ジャパン(除く自賠責・家計地震)

KGI
									事業別ROE 8%以上
																														
									KPI
									E/Iコンバインド・レシオ* 95.0%未満 収益性
									政策株式削減 6,000億円以上 安定性
									台風リスク 維持または抑制 安定性
									長期契約比率 削減を目指す 機動性
									* 損害保険ジャパン(除く自賠責・家計地震)

新中計における主な取組み

①ポートフォリオ変革

自然災害の激甚化・頻発化、インフレの継続など、近年の損害保険マーケットを取り巻く厳しい事業環境に対応するべく、機動的かつメリハリの利いたプライシングと規律あるアンダーライティングを実現していきます。具体的には、収益性が著しく悪化している特定契約への対策が中心であった従来のアンダーライティング態勢から、保有するすべての契約をセグメント別に収益管理し、きめ細かなアンダーライティング方針を策定できる態勢に転換していきます。収益に課題のあるセグメントを改善し、優良なセグメントを増やすなど、保有契約群の収益ポテンシャルを最大限発現させていくことによって、良質な契約ポートフォリオの構築を目指していきます。

セグメント別収入保険料(除く自賠責・家計地震)比率
グラフ:2023年度末から2026年度(見込み)への変化。優良セグメントと中立セグメントは増加、削減・改善対策セグメントは減少。※セグメント区分の定義は種目別に異なる

②営業部門変革

営業部門では、旧弊とされる業界慣習を払拭し、品質向上と収益対策に資する行動が正しく評価される企業文化にシフトチェンジしていきます。代理店との二重構造問題の解消や過度な本業支援の廃止、政策株式の削減を行っていくなど、旧来からのビジネスモデルを見直すことに加え、営業店事務の集約化やペーパーレス化、キャッシュレス化の推進などにより生産性向上を実現していきます。

そして、これらの取組みで創出された時間やリソースを品質向上と専門性強化へ投入することによって、リテール営業部門では高品質なサービスを効率的かつ安定的に提供すること、コマーシャル営業部門では分業化と専門性の強化により総合的なリスクソリューションを提供していくことを目指していきます。

ポートフォリオ変革を営業面で推進する
図:リテール営業
									人口減少によりマーケットも穏やかに縮小
									高位平準化と生産性向上で環境変化に対処
									高位標準化
									・ ナレッジマネジメント強化
									・ 行動提案ツールの導入
									生産性向上
									・ 組織、店舗の大括り化
									・ 営業事務集約
									・ 代理店支援集約化
									
									コマーシャル営業
									新種保険の浸透などでマーケットは引き続き拡大
									専門性強化を柱に収益拡大を目指す
									専門性強化
									アカウントマネージャー:顧客企業の総合窓口
									フィールドアンダーライター:商品部門に所属し直接企業・ブローカーなどと交渉
									リスクソリューションサポーター:サーベイや各種リスク関連サービスの専門家
									グループリテールマーケター:職域分野のキーリエゾンとして保険・非保険サービスを提供
									
									外部連携・M&Aなども含めた付加価値強化を並行して検討
									営業評価体系を品質・収益重視へ変更、政策株式保有を2030年度までにゼロへ、過度な本業支援の廃止

③保険金サービス部門変革

保険金サービス部門では、お客さまに品質で選ばれ、持続的に成長する会社に変革していくために、「適切な保険金支払い」と「お客さまの満足」を不変的なミッションとして再定義しました。正しいことを正しく実践し、すべてのステークホルダーの期待に応える会社となるため、海外子会社(Sompoシゴルタ)の先進的な組織設計やデジタル化の取組みを参考にし、効率的な事故対応態勢の構築に取り組んでいきます。具体的には、事故受付、初動対応、修理工場紹介、不正検知、保険金支払いに至るすべての事故対応プロセスを見直し、デジタルを活用した事業効率の改善と不正検知・適正支払いの強化を図っていきます。

保険金サービス部門の追求領域
図:追求領域。
									・支払適正性、CFR 不正対策←CFR(Closed File Review)を業務プロセスに組み込むことで、支払適正性のモニタリングと改善PDCAを実現
									・従業員満足
									・業務効率
									・お客さま満足
変革の実現に向けた主な取組み
図:2024年度変革後のプロセス設計・モデル店でのパイロット開始
										2025年度新業務プロセスの全国展開
										標準化:本社による中央集権的コントロール、オペレーションを全国標準化
										集約化:全国の保険金サービス部を地域単位に集約、需要変動へのリソース分配を柔軟に
										分業化、専門化:事案タイプごとの分業、各領域の専門家による対応
										見える化:データ収集の仕組みを構築、施策効果をリアルタイムで評価・検証可能へ

④カルチャー変革

コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土を醸成し、SJ-Rで目指す、あらゆるステークホルダーから「損保ジャパンでよかった。SOMPOでよかった。」と言っていただける「新しい損保ジャパン」の実現を目指していきます。この実現に向けて、CCuO(Chief Culture Officer/カルチャー変革担当役員)とカルチャー変革推進部の新設に加え、経営層による全国の社員との対話の場やメッセージの発信など、全社レベルでの変革を推進しています。守るべきものは守り、変えるべきものは変え、新たな全役員・全社員共通の価値観を醸成し、一定の時間をかけて、上意下達ではない、風通しのよい健全な企業風土を実現していきます。

カルチャー変革
									【SJ-Rのバリュー】
									お客さまに、社会に、まっすぐ。
									私たちの5つの約束
									1.お客さま・社会からの信頼を第一に、公正・公平に対応をします。
									2.代理店さんと共に、お客さまに寄り添い、くらしと社会を支えます。
									3.品質を重視し、「スピード」と「わかりやすさ」にこだわります。
									4.自ら学び、専門性を高め合い、保険本来の価値を追求します。
									5.多様性と「個」のチカラを活かし、保険の未来に挑み続けます。
									【カルチャー変革に向けた取組み】
									カルチャーの言語化:普遍的な価値基準を2024年内に策定
									カルチャーの浸透・定着:各部支店の経営計画への組み込み
									カルチャーの見える化:カルチャーチェンジサーベイを実施
									「振り返りの日~お客さまの立場で考え、行動につなげる~」の設定

⑤品質管理・ガバナンス強化

品質管理を通じ、お客さま視点での業務改善を推進する態勢を構築していくことで、「お客さまに価値で選ばれ、持続的に成長する会社」を目指していきます。この実現に向けて、お客さま評価の向上を目的に、CQO(Chief Quality Officer/品質担当役員)と品質管理担当部署を新設しました。さらに、社外の委員を含む品質管理委員会を新設し、外部目線を取り入れた品質改善に取り組んでいきます。

また、ガバナンス強化については、「監査等委員会設置会社」へと移行し、社外取締役を設置することで監督と執行の分離による取締役会の監督機能の強化、役員のミッション(期待役割)と責任・権限の明確化などに取り組んでおり、業務改善計画を着実に実行し、定着を図っていく態勢を整えています。

品質管理の強化
									■「お客さま信頼品質基準」の策定と浸透・定着に向けた取組み
									当社は、今般の一連の問題や行政処分などを受け、改めてお客さま視点の取組みが重要であるとの認識のもと、「お客さま信頼品質基準」を定義し、浸透・定着に向けて取り組んでいきます。
									
									「お客さま信頼品質基準」とは
									「お客様信頼品質基準」は、お客さまが当たり前に期待するボーダーライン*(これを下回ると信頼を失う基準)と位置づけています。
									*「お客さま信頼品質基準」のボーダーラインはお客さまによって異なります。
									コンダクトリスクとは
									近年、法令違反のみならず社会規範に反する行為や「会社の常識」と「世間の常識」の乖離を幅広くリスクとしてとらえる動きが広まっており、このようなリスクをコンダクトリスクといいます。

⑥データドリブン推進・IT変革

テクノロジーの進化やお客さまニーズ・価値観の多様化など、極めて複雑で刻一刻と変化している環境下においても、お客さまに選ばれ続けるためには、収集・整理した客観的なデータにもとづいて、お客さまのことを正しく理解し、行動していくことが重要と考えています。データを見て行動する新しい文化が定着し、「新しい損保ジャパン」の実現に向けた変革を加速させるため、新設したデータドリブン経営推進部を中心に全社横断でのデータ利活用に向けた態勢の構築および社員のデータリテラシー向上に取り組んでいきます。

また、その基盤構築の支えとなるIT変革においては、重複する基幹システムや低利用システムなどを整理し、ITコストを適正化するとともに、外部接続が容易な新システムの特性を活かし、業務自動化の推進や保険金サービス部門などのビジネス変革を進めていきます。

⑦人材育成・人事制度

品質を創り上げているのは、社員であることから、「人を大切にし、育てる。」という経営方針のもと、人材育成・人的投資に積極的に取り組んでいきます。具体的には、SJ-Rで取り組む事業基盤・収益基盤の変革に対応できる人材づくりに向けて、キャリア採用・新卒ジョブ型コースなどの採用強化に加え、ジョブ型人事制度の拡充・アップデート、社内人材の専門性強化(戦略的なローテーション等)などにより、ゼネラリスト中心の人材ポートフォリオを専門人材とのバランス型へシフトしていくことで、人材力の強化を図っていきます。