統合レポート2024(オンライン版)
国内損害保険事業
国内損害保険事業では、お客さま・社会からの信頼回復を最優先としつつ、高い独自性とレジリエンスを誇る「新しい損保ジャパン」を実現するため、事業基盤と収益基盤の変革に取り組んでいきます。
新中計における事業戦略の全体像
国内損害保険事業は、SOMPOグループの一員として持続的な成長を図り、お客さまにとって価値ある商品・サービスを創造することで、社会に貢献していきます。
2024年度からスタートした新中期経営計画では、「お客さまに、社会に、まっすぐ。」をスローガンとして掲げ、業務改善計画を着実に遂行することでお客さま・社会からの信頼回復に努めつつ、独自性とレジリエンスを追求することを基本戦略としています。その実現の手段として実践するのがSJ-Rであり、全社をあげて取り組んでいきます。具体的には、ポートフォリオ変革や営業変革、保険金サービス変革といった収益基盤を強化することで直接的に財務効果へ結びつく取組みと、品質管理・ガバナンス態勢の見直しやカルチャー変革など、事業基盤の強化を通じて中長期的に収益力の強化へつながる取組みの二本柱でビジネスモデルの変革を実現していきます。それぞれの取組みは独立したものではなく、事業基盤の変革によって競争力を強化し、収益基盤の変革で得た収益を非財務領域である事業基盤へ再投資していくという循環型の仕組みを意図しており、これにより「新しい損保ジャパン」の実現を目指していきます。

また、SJ‒Rの取組みのなかで、保険金サービス部門による保険金支払いの適正化や生産性の向上、商品部門による適切なプライシング、営業部門と商品部門による緊密な連携で実現する規律あるアンダーライティングなど、収益基盤を強化していくことによって、収益力の回復、収益の安定性、環境変化に対応する機動性の3つを同時に高めていきます。具体的には、2026年度に事業別ROE8%以上、E/Iコンバインド・レシオ*95%未満の達成に加え、台風リスクのコントロールや政策株式削減の加速、自動車保険や火災保険を中心とした長期契約比率の削減を目標として定めています。新中期経営計画でSJ-Rの取組みを完遂することにより、収益力の回復や成長を実現し、単一年度の収益性のみならず、収益の安定性や環境変化に柔軟かつタイムリーに対処するための機動性も備えた事業を構築していきます。

新中計における主な取組み
①ポートフォリオ変革
自然災害の激甚化・頻発化、インフレの継続など、近年の損害保険マーケットを取り巻く厳しい事業環境に対応するべく、機動的かつメリハリの利いたプライシングと規律あるアンダーライティングを実現していきます。具体的には、収益性が著しく悪化している特定契約への対策が中心であった従来のアンダーライティング態勢から、保有するすべての契約をセグメント別に収益管理し、きめ細かなアンダーライティング方針を策定できる態勢に転換していきます。収益に課題のあるセグメントを改善し、優良なセグメントを増やすなど、保有契約群の収益ポテンシャルを最大限発現させていくことによって、良質な契約ポートフォリオの構築を目指していきます。

②営業部門変革
営業部門では、旧弊とされる業界慣習を払拭し、品質向上と収益対策に資する行動が正しく評価される企業文化にシフトチェンジしていきます。代理店との二重構造問題の解消や過度な本業支援の廃止、政策株式の削減を行っていくなど、旧来からのビジネスモデルを見直すことに加え、営業店事務の集約化やペーパーレス化、キャッシュレス化の推進などにより生産性向上を実現していきます。
そして、これらの取組みで創出された時間やリソースを品質向上と専門性強化へ投入することによって、リテール営業部門では高品質なサービスを効率的かつ安定的に提供すること、コマーシャル営業部門では分業化と専門性の強化により総合的なリスクソリューションを提供していくことを目指していきます。

③保険金サービス部門変革
保険金サービス部門では、お客さまに品質で選ばれ、持続的に成長する会社に変革していくために、「適切な保険金支払い」と「お客さまの満足」を不変的なミッションとして再定義しました。正しいことを正しく実践し、すべてのステークホルダーの期待に応える会社となるため、海外子会社(Sompoシゴルタ)の先進的な組織設計やデジタル化の取組みを参考にし、効率的な事故対応態勢の構築に取り組んでいきます。具体的には、事故受付、初動対応、修理工場紹介、不正検知、保険金支払いに至るすべての事故対応プロセスを見直し、デジタルを活用した事業効率の改善と不正検知・適正支払いの強化を図っていきます。


④カルチャー変革
コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土を醸成し、SJ-Rで目指す、あらゆるステークホルダーから「損保ジャパンでよかった。SOMPOでよかった。」と言っていただける「新しい損保ジャパン」の実現を目指していきます。この実現に向けて、CCuO(Chief Culture Officer/カルチャー変革担当役員)とカルチャー変革推進部の新設に加え、経営層による全国の社員との対話の場やメッセージの発信など、全社レベルでの変革を推進しています。守るべきものは守り、変えるべきものは変え、新たな全役員・全社員共通の価値観を醸成し、一定の時間をかけて、上意下達ではない、風通しのよい健全な企業風土を実現していきます。

⑤品質管理・ガバナンス強化
品質管理を通じ、お客さま視点での業務改善を推進する態勢を構築していくことで、「お客さまに価値で選ばれ、持続的に成長する会社」を目指していきます。この実現に向けて、お客さま評価の向上を目的に、CQO(Chief Quality Officer/品質担当役員)と品質管理担当部署を新設しました。さらに、社外の委員を含む品質管理委員会を新設し、外部目線を取り入れた品質改善に取り組んでいきます。
また、ガバナンス強化については、「監査等委員会設置会社」へと移行し、社外取締役を設置することで監督と執行の分離による取締役会の監督機能の強化、役員のミッション(期待役割)と責任・権限の明確化などに取り組んでおり、業務改善計画を着実に実行し、定着を図っていく態勢を整えています。

⑥データドリブン推進・IT変革
テクノロジーの進化やお客さまニーズ・価値観の多様化など、極めて複雑で刻一刻と変化している環境下においても、お客さまに選ばれ続けるためには、収集・整理した客観的なデータにもとづいて、お客さまのことを正しく理解し、行動していくことが重要と考えています。データを見て行動する新しい文化が定着し、「新しい損保ジャパン」の実現に向けた変革を加速させるため、新設したデータドリブン経営推進部を中心に全社横断でのデータ利活用に向けた態勢の構築および社員のデータリテラシー向上に取り組んでいきます。
また、その基盤構築の支えとなるIT変革においては、重複する基幹システムや低利用システムなどを整理し、ITコストを適正化するとともに、外部接続が容易な新システムの特性を活かし、業務自動化の推進や保険金サービス部門などのビジネス変革を進めていきます。
⑦人材育成・人事制度
品質を創り上げているのは、社員であることから、「人を大切にし、育てる。」という経営方針のもと、人材育成・人的投資に積極的に取り組んでいきます。具体的には、SJ-Rで取り組む事業基盤・収益基盤の変革に対応できる人材づくりに向けて、キャリア採用・新卒ジョブ型コースなどの採用強化に加え、ジョブ型人事制度の拡充・アップデート、社内人材の専門性強化(戦略的なローテーション等)などにより、ゼネラリスト中心の人材ポートフォリオを専門人材とのバランス型へシフトしていくことで、人材力の強化を図っていきます。