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(2024年8月発行)

グループ共通戦略

企業価値の最大化に向けて資本市場の声に耳を傾け適切な資本政策を実行します。

グループCFO

濵田 昌宏

2024年度から新中期経営計画がスタートしました。この新中計では、最終年度の2026年度までに修正連結ROE13~15%水準への引き上げ、新中計期間の修正EPS成長率12%超の達成をグループ経営数値目標*1として掲げました。

私はグループCFOとして、SOMPOグループ全体の資本配賦の最適化・資本効率の向上を進めるとともに、各グループ会社の経営管理を通じて、このグループ経営数値目標の達成にコミットしていきます。強化策の一環で、2024年度よりFP&A機能の専門部署である事業分析室を作りました。各事業の経営状況・財務状況の分析・提言を通じて、各事業の業績改善に一体となって取り組み、計画達成を支えていきます。

また、企業価値の最大化に向けて資本市場の声に耳を傾け適切な資本政策を実行するとともに、財務・非財務を問わずグループ課題を常に自分事ととらえ、当社グループのさらなる成長に貢献していく所存です。

昨年度、当社グループは国内損害保険事業を中心に大きな問題を引き起こしてしまい、さまざまな課題が顕在化しました。新中計の策定においては、まずはこれらの現状と課題をふまえ、あらためてお客さま、株主の皆さま、社員、社会といった多様なステークホルダーを強く意識してきました。そして、国内損害保険事業はまずは信頼回復とレジリエンスを重視したビジネスモデルへと見直し、その間海外保険事業がグループの成長を牽引、さらにウェルビーイング事業で将来の成長を創造、というグループの3年間の道筋を策定しました。

それでは、今回策定した新中計について、財務戦略を中心に皆さまにご説明します。

*1 IFRSベース、修正連結ROEは除くOCI

前中期経営計画の経営数値目標の振返り

まずは、新中計の起点となる前中期経営計画について振り返りたいと思います。2021年度から始まった前中計ですが、最終年度の2023年度は、前述のとおり国内では大きな不祥事案が経営を揺さぶったものの、海外保険事業の牽引でグループ業績は順調に推移し、当初目標としていた修正連結利益3,000億円にはわずかに届きませんでしたが、2,910億円となり過去最高益を更新することができました。

また、修正連結ROEは9.2%となりましたが、昨年度の金融市場の変動影響などを勘案すれば10.1%となり、資本効率は前中計の目標であった10%レベルまで到達しました。

図1修正連結利益*2の推移
図:単位:億円
																														2010年度276、2023年度2,910。
																														2010年度比、年率+20%成長。
																														2020年度比、年率+13%成長。

*2 2010~2015年度は2016年度の定義をベースとした試算値。 2021年度、2022年度は自然災害などの一時的要素を調整した平年値ベースに補正

財務戦略の観点から、リスク削減および創出される資本を成長分野に振り向け、また成長投資とのバランスが取れた魅力ある株主還元の実行にも取り組んできました。

政策株式リスクや金利リスクなど、国内で低資本効率分野のリスクは計画を上回って削減し、リスク削減によって生まれた資本は、事業領域を超えて活用し、資本循環により当社の高成長を後押ししました。具体的には、国内損害保険事業から海外保険事業に2,000億円の資本移転を行い、海外クレジット運用を通じたグローバル分散投資の拡大などにより、150億円超の利益貢献となりました。また、介護事業基盤強化に向けて介護システム大手のNDソフトウェア社の買収も実行しました。

株主還元については、利益成長にあわせた着実な増配や、資本効率などをふまえた機動的な自己株式取得を実行してきました。前中計期間中の1株当たり配当は年率+21%の成長となり、10期連続の増配となりました。また、合計1,800億円規模の自己株式を取得した結果、前中計期間における修正EPS成長は年率+16%となり、修正連結利益の伸びを上回る成長となりました。

前中計の取組みによる着実な利益成長と資本効率向上・株主還元の充実化により、当社のバリュエーションは大幅に改善しました。株価は大幅上昇して時価総額3兆円を達成し、J-GAAPベースでのPBRは1倍超となりました。今後は新中計の取組みを通じて、異常危険準備金なども資本に含めた修正PBRでも1倍超の達成を目指します。

図2株主還元の推移
図:単位:億円
																														総還元額
																														2013年度347、2023年度1,759。
																														2013年度比、年率+17%増。
																														2020年度比、年率+20%増。
																														11期連続増配*1

*1 2024年度予想を含む

図3一株あたり修正連結利益(修正EPS)の推移*2
図:単位:円
																														2010年度22、2023年度293。
																														2010年度比、年率+22%成長。
																														2020年度比、年率+16%成長。

*2 2010~2015年度は2016年度の定義をベースとした試算値。 2021年度、2022年度は自然災害などの一時的要素を調整した平年値ベースに補正

図4株価純資産倍率(PBR)*3と修正連結ROE*4の推移
図:PBR(J-GAAP)1.2倍、修正PBR0.8倍、修正連結ROE10.1%(2023年度)

*3 Bloombergデータなどを基に当社推計

*4 2021年度、2022年度は自然災害などの一時的要素を調整した平年値ベースに補正。2023年度は、金融市場変動に伴う資本増加影響等を補正

新中期経営計画の財務目標・財務戦略

冒頭で申しあげたとおり、新中計では最終年度の2026年度までに修正連結ROE13~15%水準への引き上げ、新中計期間の修正EPS成長率12%超の達成をグループ経営数値目標として掲げていますが、この目標はIFRS(国際財務報告基準)にもとづくものです。当社では、2024年度末の有価証券報告書からのIFRS適用に向けて、現在準備を進めているところです。

それでは、新中計の具体的な財務戦略についてこれからご説明します。

資本循環経営の進化

新中計の財務戦略として、資本循環経営の進化を掲げています。資本循環経営とは、資本効率向上で先行する欧州保険会社ピアですでに定着しているものですが、わかりやすく言うと、儲かっていない分野の資本・資金を、儲かっている分野に移して利益を創出し、創出された利益の一部を株主の皆さまに還元するとともに、残りをまた質の高い利益の創出に活用していくという好循環を生む経営のことです。

資本循環経営のなかで、持株会社は各事業が創出した利益を回収し、その集約した資本をグループ経営数値目標である修正連結ROEおよび修正EPSの成長に資する投資や魅力ある株主還元に活用するとともに、各事業への資本の再配賦、業績モニタリングなどといった役割を担います。なお、新中計では各事業から持株会社への資本・資金回収(レミッタンス)を強化する方針を定め、原則、年間の修正利益の100%を持株会社に集約する考え方を導入しています。

各事業では、配賦された資本をもとにビジネスを運営していきます。そのなかで、資本効率を最大化するようなリスクテイクを実行し、事業別ROEなどのKPIを着実に達成することで、グループ経営数値目標の達成に寄与する役割を担います。

なお、KPIには経営数値目標に直結するものと事業基盤を強くするためのものがあり、新中計では後者についても重視していきます。

また、新中計で目指すROE目標などもふまえ、資本の充実状況を示すESR(Economic Solvency Ratio)のターゲットレンジ上限を20pt引き下げて250%に変更しました。成長投資と株主還元のバランスをふまえた資本政策により、グループ経営数値目標である修正連結ROEおよび修正EPS成長の達成を確実なものとしていきます。

それでは、資本循環経営のそれぞれのポイントについて説明していきます。

図5ESRターゲットレンジ
図:ターゲットレンジの上限250%に引き下げ(従来:270%)。ターゲットレンジ、200%~250%、
																														・資本効率向上への継続的な取組み
																														・株主還元方針に沿った還元の実施

リスク削減・コントロール

新中計での主なリスク削減は国内株式リスクです。2024年2月に、2030年度末までに政策株式の保有残高ゼロを目指すことを公表しました。2024年度の政策株式削減計画額は、発行体との協議状況などもふまえつつ、前年の3倍弱となる2,000億円を最低限の目標としました。また、新中計期間の政策株式削減計画額は、6,000億円を最低ラインとしました。こちらの最低目標は、2030年度末までのタイムライン、業界の政策株式を取り巻く外部環境の変化、投資機会とのバランス、資本効率などを総合的に勘案して設定していますが、昨今の情勢をとらえ、発行体側が流動化を加速させたいなどの動きも出てきていることから、2030年度に向けて削減ペースをさらに加速させ、投資機会などに備えます。

そのほかにも、国内自然災害リスクの管理を強化するとともに、収益性の悪い保険ポートフォリオの削減なども進めていきます。

図6政策株式保有残高の推移と削減額
図:削減額:5,427億円(2016~2020年度)、1,956億円(2021~2023年度)
																														2024年度2,000億円以上削減、新中計期間累計で6,000億円削減が最低ライン、さらなる加速で投資機会に備える。2030年保有ゼロ。

*退職給付信託における保有分を含む

リスクテイク

政策株式削減によりさらに強化された資本を、オーガニック成長やM&Aなどに振り向けていきます。

なお、当社ではグループの目指す姿を実現するため、「取るリスク」や「回避するリスク」を定量・定性両面から明文化したリスクアペタイトステートメントを定めており、規律を持ってリスクテイクを行っていきます。

新中計における具体的なリスクテイクの方向性としては、収益性の高いセグメントを中心とした保険引受リスクの拡大や、クレジット投資の拡大などの資産運用リスクテイク、M&A、基盤強化などに活用します。

M&Aについては、政策株式がゼロとなったあとの世界に備えて、前中計以上に強い投資アペタイトを持って臨みます。投資対象としては、新中計のキーワードである「レジリエンスのさらなる向上」、「お客さまをつなぎ、サービスをつなげる」の実現に資する領域へ積極的に投資していく方針です。

「レジリエンスのさらなる向上」の領域では、大型案件を含む海外保険M&Aを対象に、利益規模の拡大・ROE向上と地理的分散・リスク分散に向けて、慎重かつダイナミックに成長投資を実行していきます。また、「お客さまをつなぎ、サービスをつなげる」の領域では、ウェルビーイング事業でのM&Aを念頭に、当社の持続的な成長に貢献し、かつSOMPOの強みが活きる投資領域に注力し、商品・サービス基盤の拡充につなげます。

なお、M&A自体は目的ではなく資本効率向上のための手段の1つですので、バリュエーションの動向もふまえて、海外の保険分野を中心としたオーガニック成長に資する投資にも目を向けていきます。もちろん、投資のみならず撤退についても規律を持って判断していきます。

また、グループ戦略実行に必要不可欠である人材への投資は新中計の目玉の1つと位置づけており、加えてイノベーションや生産性の向上などに資するデータ・デジタルに関する投資もしっかり行っていきます。

資産運用戦略

当社グループの修正連結利益に占める、資産運用収益の比重は年々増加傾向です。加えて、資産運用収益は、高金利を享受できる海外事業の規模拡大と連動して安定的に増益基調を維持しています。近年多発する自然災害やインフレにより、収益性・利益安定性が低下傾向にある保険引受に比し、グループ修正連結利益水準を支える土台として、資産運用の重要度は高まっています。

新中計では、負債や流動性に配慮しつつ適切な分散投資を続ける一方で、「金利ある世界」へと変遷する過程で想定される金融市場のボラティリティに備えた資産運用ポートフォリオの管理が重要と考えます。引き続き、ポートフォリオのクオリティを重視した安全性の高い運用を心がけつつ、海外クレジット投資の強化などによるリスク・リターン向上など、これまで取り組んできたポートフォリオの分散をさらに推し進めることで、資産運用ポートフォリオのリスク・リターンや収益力、レジリエンスの向上につなげます。これにより、新中計の最終年度となる2026年度までのグループ資産運用収益は年率+10%以上の成長を目指す計画です。

また、新中計ではグループ一体運営の強化をさらに推し進める方針です。グループ資産運用ガバナンス、リスク管理の高度化により、効率的な運用態勢を構築していくことで、資産運用の効率性・収益性、レジリエンスを追求します。

株主還元方針

リスク削減やリスクテイクの結果、創出された各事業の利益については、原則としてその100%を持株会社にて集約・管理します。そして集約した資本のうち一部は、株主の皆さまに還元します。株主還元にあたっては、財務健全性や事業環境などを勘案しつつ、持続的な利益成長による増配の継続を基本とし、株価・資本の状況に応じた機動的な自己株式取得も選択肢とします。

新中計では、修正連結利益の50%を基礎還元とし、利益成長により、配当総額に自己株式取得額を加えた総還元額を拡大させていきます。IFRS導入を予定している2025年度以降は、還元の安定性・予見可能性を高めるため、修正連結利益の直近3年平均の50%を基礎還元とします。また、中期的な利益成長にあわせた増配を原則とし、基礎還元に占める配当の割合を高めていきます。

基礎還元に加え、原則として政策株式売却損益等(税後)の50%を追加還元します。なお、ESRターゲットレンジ上限を恒常的に超過する場合には、リスクと資本の状況、業績動向や金融市場環境などをふまえて資本水準調整も検討し、さらに株主還元の魅力を高めていきます。

図7株主還元方針
図:株主還元:配当(EPS成長にあわせた増配)自己株式取得
																														基礎還元:修正連結利益の50%*、利益成長による増加
																														追加還元:原則、政策株式売却損益等(税後)の50%、リスクと資本の状況、業績動向や市場環境などをふまえて決定。

* IFRS適用後は修正連結利益(直近3年平均)の50%